IMFがMENA地域の2023年成長見通し発表、3.1%に減速の予測

(中東、アフリカ)

中東アフリカ課

2023年05月25日

IMFは5月3日に発表した「地域経済見通し(中東・中央アジア)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、2023年の中東・北アフリカ(MENA)地域(注1)の実質GDP成長率を3.1%とし、2022年の5.3%から減速の見込みとなった。この数値は、2023年の世界経済の成長率予測2.8%を0.3ポイント上回った(2023年4月13日記事参照)。また、2024年は若干の回復を見せ3.4%となる見通し。

IMFは、MENA地域の成長減速の予測について、インフレ対策のための世界的な金融引き締め政策の影響、2023年4月にOPECプラスで合意された石油減産(2023年4月3日記事参照)の影響、および各国の財政状況の悪化が要因としている。今回発表の2023年の成長率は、2022年10月時点の発表(2022年11月7日記事参照)の3.6%から0.5ポイントの下方修正となった。

国・地域別にみると、石油輸出国(注2)の2023年の成長率も同様に、2022年の5.7%から3.1%に鈍化すると予想されている。IMFは鈍化の主な要因を、石油産業から非石油産業への移行のためと分析している。湾岸協力会議(GCC)諸国全体では2.9%成長の予測で、そのうち最も成長率が高いのはアラブ首長国連邦(UAE、3.5%)との見込みだ。

MENA地域の消費者物価上昇率(年平均)は、2023年は14.8%と前回発表(2022年11月7日記事参照)から2.4ポイントの上方修正となった。特にイラン(2022年49.0%、2023年42.5%)で高い上昇が見られる。

MENA地域全体の経常収支は、2023年はGDP比4.5%の黒字だが、2022年の同9.0%からは縮小するとの予測だ。2022年と比べると、多くの石油輸出国では経常収支の黒字が縮小し、石油輸入国では経常収支の赤字が続くものの改善する見込みだ。2023年の主な国の経常収支(GDP比)は以下のとおり。

【2023年の経常収支(GDP比)】

〇石油輸出国

  • クウェート:19.7%(2022年28.5%)
  • カタール:19.2%(同26.0%)
  • UAE:7.1%(同11.7%)
  • サウジアラビア:6.2%(同13.8%)
  • イラク:4.4%(同11.6%)

〇石油輸入国

  • ヨルダン:マイナス6.0%(2022年マイナス7.4%)
  • モロッコ:マイナス3.7%(同マイナス4.3%)
  • エジプト:マイナス2.8%(同マイナス3.5%)

(注1)IMFの定義では、MENAはアルジェリア、バーレーン、ジブチ、エジプト、イラン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モーリタニア、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、ソマリア、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン川西岸地区およびガザ地区、イエメンの22カ国・地域。イスラエルとトルコは含まない。

(注2)アルジェリア、バーレーン、クウェート、イラン、イラク、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAE。

(吉川菜穂)

(中東、アフリカ)

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