2023年度の政府ICT調達は総額33億Sドル、環境持続性の審査開始

(シンガポール)

シンガポール発

2023年05月30日

シンガポール政府テクノロジー庁(GovTech)は5月24日、2023年度(2023年4月~2024年3月)の情報通信技術(ICT)関連の調達予定総額が33億シンガポール・ドル(約3,432億円、Sドル、1Sドル=約104円)になる見通しだと発表した。同年度からICT機器調達を皮切りに環境持続性を審査対象とする予定だ。

同国は2014年から最新ICT技術を活用して生活を豊かにし、経済活性化を目指すスマート国家構想(注1)を開始した。政府テクノロジー庁は首相府管轄下の行政のデジタライゼーションを中心にスマート国家の実現を推進する執行機関。同庁の2023年度のICT調達予定額は、2021年度と2022年度の各38億Sドルを下回ったが、ICT調達額は2014年度の調達額(20億Sドル)から拡大基調にある。同庁の発表によると、2023年度のICT調達予定額33億Sドルのうち25億Sドル(約76%)は、各省庁のICT需要を集約した一括調達案件となる。一括調達の主要案件としては、(1)クラウド上のサブスクリプション形式のソフトウエア(調達額:6億Sドル)、(2)クラウドを支えるホスティングサービス(同8億5,000万Sドル)、(3)公務員(注2)用のパソコン、プリンター合計約10万台(同4億Sドル)がある。

同国は2022年10月に二酸化炭素(CO2)排出量を2050年までに実質ゼロ(ネットゼロ)とする目標を設定。政府機関については、2045年までにネットゼロの達成を目標としている。この目標達成のために政府は3月、政府入札で環境持続への貢献度を審査する方針を明らかにした(2023年3月15日記事参照)。政府テクノロジー庁はまず、上掲のパソコン、プリンターの一括調達に当たり、評価ポイントの5%分について環境持続性を評価する。

同庁は2018年10月以降、省庁が使用するシステムをクラウド上に段階的に移行している。5月時点で移行可能なシステムの約66%をクラウドに移行。2023年末までに70%まで移行する。クラウドへの移行により、クラウド上で作動する市販のソフトウエアの導入も容易となる。この結果、必要なシステムを一から開発することが不要となり、導入までの期間を短縮できる。同庁は今後、クラウド利用に際して、調達からリサイクルまでの温室効果ガス排出の削減に取り組む方針だ。

(注1)スマート国家(Smart Nation)構想に基づく政府の取り組みについては、2019年8月30日付地域・分析レポート参照

(注2)シンガポールの16省、50の政府執行機関では約15万人の公務員が働く。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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