欧州ICT業界、EUの「修理する権利」法案について提言

(EU)

ブリュッセル発

2023年05月23日

欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体デジタルヨーロッパは5月15日、欧州委員会が3月に発表した「製品の修理を推進するための共通ルールに関する指令案」(2023年3月27日記事参照)について政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。消費者に製品の廃棄や買い替えよりも修理を促すため、消費者の新たな権利として「修理する権利」を導入した指令案について、「消費者が安全で確実な修理サービスを受けることができる」と歓迎し、より効果的な枠組み作りのための変更点として主に3点を提言した。

1点目は、不良品を整備済み製品(注)と交換することも「修理」の定義に含めることだ。欧州委の影響評価によると、現在、消費者が修理より交換を選ぶ最大の要因は修理にかかる時間だった。提言では、不良品と整備済み製品との交換が認められれば、消費者は迅速に問題解決でき、不良品の回収も進むため、循環型経済の実現に貢献できるとした。

2点目は、EU加盟国に対し、単一のオンラインプラットフォームで修理に関する情報を集約し、消費者に提供することを義務付けることだ。現在の指令案では、国ごとに複数のプラットフォームが作られる可能性があり、企業に登録の負担となる上、消費者を混乱させる恐れがあると指摘した。

消費者への修理サービスの情報提供に関しては、エコデザイン規則案で提案された「デジタル製品パスポート」(2022年4月4日記事参照)や製造事業者のウェブサイトといったオンラインでの提供が可能と明記すべきだと主張した。また、単一市場の歪曲(わいきょく)への懸念から、加盟国は指令案にない製品の持続可能性に関する独自の要件追記を避けるべきだとした。

3点目は、修理サービス品質基準の策定に向けた明確なタイムフレームを提示することだ。安全で信頼できる業者を消費者が選びやすいように、欧州委は修理サービスに関する自主的な品質基準を開発する意向を示している。提言では、電子機器の不適切な修理が感電や火災をもたらすなどの例を挙げ、基準の策定について時間軸を示し、安全確保を確実にする必要があると述べた。

また、製造事業者に法定保証外の不良に対する修理サービスの提供の義務化とそのコスト設定は企業の裁量に任せるとしたことに加えて、企業間の製品修理を同指令案の対象としなかったことを支持。企業間の修理サービスは企業間の契約で扱うことが適切だとした上で、指令案で修理の義務化対象となっているサーバーおよびデータ保存用製品は主に企業が購入するため対象外とし、消費者が購入することが多い、容量が小さいサーバーやデータ保存用製品のみ対象とすべきだと提言した。

(注)返品などでメーカーに戻ってきた製品を、再検品や部品交換して販売されるリファービッシュ品のこと。

(滝澤祥子)

(EU)

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