米商務省主催の対米投資誘致サミット、過去最大の4,900人超が参加

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月08日

米国商務省が主催するセレクトUSA投資サミットが5月1~4日、首都ワシントン近郊のメリーランド州ナショナル・ハーバーで開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。今回のサミットには83の国・地域の投資家、米国内55の州政府・米国領の投資誘致機関など、過去最大となる4,900人超が参加した。各州政府が設置した展示ブースや、各州・各国主催レセプションなどで、活発な商談や交流が行われた。

写真 各州政府の展示ブース(ジェトロ撮影)

各州政府の展示ブース(ジェトロ撮影)

写真 ジェトロ主催レセプション(ジェトロ撮影)

ジェトロ主催レセプション(ジェトロ撮影)

同サミットは、米国への外国直接投資誘致を目的として2013年に初めて開催され、2015年以降は新型コロナ禍の2020年を除き、毎年開催されており、今回が9回目となる。主催者によると、今回のサミット会期中には11件の投資やプロジェクトの発表があり、これらの総額は5億ドル超に達する。発表された案件には、インドのJSWスチールによるオハイオ州の自社製鉄所への1億4,500万ドルの投資、ノルウェーのネルによるミシガン州での最大4億ドルの自動電解槽製造設備の新設(2023年5月8日記事参照)、スイスのABB米国子会社のABBノースアメリカとアーカンソー州立大学の間での100万ドルの労働力開発パートナーシップ締結、インディアナ州、同州のパデュー大学、ベルギーの研究所IMECの間での半導体分野に関する共同研究開発の覚書締結、などがある。

4日間に及んだ会期中には、ジョー・バイデン大統領をはじめ、ジーナ・レモンド商務長官、キャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表、ピート・ブディジェッジ運輸長官、アントニー・ブリンケン国務長官など閣僚による投資家向けのあいさつやメッセージが紹介された。2日目の冒頭にあいさつしたレモンド長官は「過去5年間のサミット参加者による投資発表額が計1,030億ドル超に達し、16万7,000人の雇用に貢献している」と同サミットの成果を強調するとともに、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)、インフレ削減法などを念頭に、「われわれはさらなる投資機会のための基盤を築いている」と主張した。さらに、「全米各地でイノベーションと雇用創出を推進するテック・ハブ・プログラムを新たに立ち上げる」と述べた。

最終日の閉会あいさつはブリンケン国務長官が行った。ブリンケン国務長官はそのなかで、前年のサミットでテキサス州への投資計画を発表した台湾の半導体メーカーのグローバル・ウェファーズを例に挙げ、「米国の先端半導体のサプライチェーンにおいて重大なギャップを埋めることになる」と述べた。また、前年のサミットに参加したウクライナの電動バイクメーカーのデルファストを例に挙げ、同社がサミット参加を契機に米国のパートナーとつながった結果、気候変動対策に貢献しながら米国市場で成功を遂げていると紹介し、同サミットの意義を強調した。その上で、「米国はビジネスにオープンであり、各社が時間と人材を米国に投資することを期待している」と締めくくった。

写真 ブリンケン国務長官の閉会あいさつ(ジェトロ撮影)

ブリンケン国務長官の閉会あいさつ(ジェトロ撮影)

サミットでは閣僚に加え、州知事やバイデン政権・関係省庁の幹部らによるブリーフィングやパネルディスカッションも多数開催され、バイデン政権がこれまでに成立させたインフラ投資雇用法、CHIPSプラス法、インフレ削減法に基づく米国内での半導体エコシステムの構築、電気自動車(EV)など脱炭素化の取り組みの推進、労働力開発の必要性などに関する議論が展開された。このうち、企業から経営課題として指摘の多い労働力開発については、国内拠点の新設や拡張を行う外国企業を対象に、政府の支援を強める省庁(商務省、労働省、教育省)横断の新たな取り組み「セレクト・タレントUSA」の発足が発表された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。次回のセレクトUSA投資サミットは、202462326日に今回と同じナショナル・ハーバーで開催される。

写真 州知事によるパネル討論(ジェトロ撮影)

州知事によるパネル討論(ジェトロ撮影)

(米山洋)

(米国)

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