カザフスタンと中国、関係強化に向けビザ免除制度導入へ

(カザフスタン、中国)

タシケント発

2023年04月17日

カザフスタン外務省は4月12日、中国との相互ビザ免除協定の草案「ビザ発行要件の相互免除に関するカザフスタンと中国の政府間協定の調印について」を公開した。同草案は4月26日まで公開討議を経た上で、5月に予定されているカシムジョマルト・トカエフ大統領の中国公式訪問時に調印される予定だ。

草案によると、中国国籍者のビザなし滞在可能日数は、入国日から180日の期間内で90日間、1回当たりの滞在は30日間までと規定しており、現行のビザ免除対象国と同様だ(2023年2月1日記事参照)。中国側もカザフスタン国籍者に対して同様の条件でビザなし滞在を認める。渡航に必要な書類はパスポートのほか、帰国証明書(カザフスタン国民のみ対象)、一時渡航書類(中国国民のみ対象)。

カザフスタン外務省は観光客誘致やビジネス・文化交流を活性化させるため、2022年6月、シャフラット・ヌリシェフ駐中国大使が胡和平・中国文化観光部長と会談、中国国民に対するビザ免除を適用する代わりに、カザフスタン国民にも同等のビザ免除を要請した(カザフスタン外務省ウェブサイト2022年6月24日)。同年7月には中国、イラン、インド3カ国を対象に、一方的措置として滞在14日間を上限とするビザ免除を開始していた。

カザフスタン戦略研究所主任専門員のアディル・カウケノフ氏は、これまでカザフスタン国籍者が中国ビザを取得するには6カ月の銀行口座の入出金記録や、無犯罪証明書などの書類を事前に提出する必要があり、ビザ取得に時間を要していることを指摘し、中国とのビジネスが活発になる中、ビザ取得免除はカザフスタンにとり外交的な勝利だと評している(テングリニュース4月13日)。

カザフスタン政府は、この協定がカザフスタンと中国の協力関係に弾みをつけると期待を寄せている。一方、両国はディアスポラの問題(注)を抱えている。市民の間には以前より中国からの大量移民や過大な経済的影響力を警戒する声もある。

(注)ディアスポラは、元の国家や民族の居住地を離れて暮らす国民や民族の集団、コミュニティーを指す言葉。元来、中国の新疆ウイグル自治区にはカザフ系住民がおり、カザフスタン独立後に中国から移住してカザフスタン国籍を取得した者も少なくない。また近年、同区での中国政府による再教育に関連して問題が発生している(2021年3月12日付地域・分析レポート参照)。

(増島繁延)

(カザフスタン、中国)

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