カナダの2023年度予算、クリーン技術への投資優遇税制を発表

(カナダ)

トロント発

2023年04月07日

カナダのクリスティア・フリーランド副首相兼財務相は3月28日、「メード・イン・カナダの計画:強い中間層、納得のいく経済、健全な未来」と題した2023年度(2023年4月~2024年3月)連邦予算案を下院議会に上程外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2023年4月7日記事参照)。

2023年度の新政策に関し、予算案では(1)「生活をより豊かにし、中間層を支える」、(2)「保健医療への投資と手頃な歯科医療」、(3)「メード・イン・カナダ・プラン: 手頃なエネルギー、良い仕事、成長するクリーンエコノミー」、(4)「和解を進め、すべての人のためのカナダを築く」、(5)「世界におけるカナダのリーダーシップ」の5章が割かれている。

(1)では特に、インフレ対策として食料品還付金制度を新設し、一時金として低所得者層を中心に25億Cドル(約2,425億円、Cドル、1Cドル=約97円)を支給するほか、(3)ではクリーン経済の確立に111億Cドル、クリーン電力への投資に74億Cドルなどが挙げられている。具体的には、2024年1月1日以降に取得・使用可能となるクリーン技術の製造・加工、重要鉱物の抽出・処理・リサイクルに使用される新しい機械や設備を対象として、投資額30%相当の税額控除を行う。加えて、2023年3月28日以降、クリーン水素製造時の二酸化炭素(CO2)の排出度合いに応じて、製造費用の15~40%を税額控除できる制度も設けるほか、水素を輸送するために水素をアンモニアに変換する上で必要な設備に対しても15%の税額控除を適用する。

他方、歳入面では、OECDによる国際課税改革のための新枠組みで「第2の柱」として掲げられている、多国籍企業に対する15%の最低法人税率が導入される。また、カナダの上場企業が余剰資金で自社株を購入する「自社株買い」について、年間購入総額が100万Cドル以上となった場合に、買い戻しの純額に対して2%課税する措置が2024年1月1日から導入される。これらの措置を通じて、2027年度までで総額116億Cドルの税収を見込む。

予算案の発表を受けて、カナダ商工会議所(CCC)は同日、「連邦予算は成長ギャップを埋められない」と題したプレスリリースを発表し、CCCのペリン・ビーティー会頭兼最高経営責任者(CEO)は「いくつかのポジティブな要素はあるものの、長期的な経済成長を実現するための協調的な戦略はまだ欠けている」とコメントした。CCCではその例として、州間貿易の障壁をなくすための州への取り組み強化策がなく、民間部門の投資促進策の導入機会を逸したこと、税額控除の範囲やカナダ成長基金の資金支出開始時期など、米国のインフレ削減法に対抗するための重要な詳細が欠けていること、80万人以上の求人に対する労働市場とのギャップを埋めるための技能・人材育成に焦点を当てた予算を望んでいたことを挙げた。また、ビーティ―会頭は「カナダには、経済成長を促進する政策や戦略的投資、連邦政府のリーダーシップが必要だ。カナダの企業はその役割を果たすことを望んでいるが、連邦政府はカナダをさらなる成功に導く上で、企業を問題ではなくパートナーとして捉える必要がある」とコメントした。

(飯田洋子)

(カナダ)

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