高関税、税関の裁量的解釈、法制定時の不透明性などを懸念、米USTR2023年外国貿易障壁報告書(インド編)

(米国、インド)

米州課

2023年04月07日

米国通商代表部(USTR)は、3月31日に公表した「2023年度外国貿易障壁報告書(NTE)」(2023年4月5日記事参照)で、インドについては、輸入政策、貿易の技術的障壁(TBT)、衛生植物検疫(SPS)措置、政府調達、知的財産保護、サービス分野の障壁、デジタル貿易と電子商取引(EC)に対する障壁を取り上げ、14ページを充てた。

中でも、輸入政策について3.5ページを割いた。インドの実行最恵国税率(MFN税率)は、最新データが入手可能な2021年で平均18.3%となっており、世界の主要経済圏で最も高いと指摘。高関税が幅広い商品に適用されており、報告書は代表例として、植物油(45%)、トウモロコシ、オートバイ(50%)、自動車、花(60%)、コーヒー、レーズン、クルミ(100%)、アルコール飲料(150%)を挙げた。また、WHOが公表している必須医薬品リストに含まれる医薬品や、缶詰、チョコレートなどの加工食品に高い関税率を課していることも、問題視した。

非関税障壁については、税関の仕組みが複雑かつ、行政の裁量に委ねられる部分が多いことに言及。インドでは、基準価格が設定されている製品について輸入品の申告価格が拒否されることがあり、輸出コストが、関税率を基に予想される以上に上昇する可能性があるとした。また、米国企業が同国にコンピュータ機器を輸出するにあたり、課税価格の計算方法について広範な調査を受けていると報告した。

知的財産保護については、以前から提起されてきた長年の懸念に進展がみられないと指摘した上で、2022年度のスペシャル301条報告書でも優先監視国にとどまっていると記述(2022年4月28日記事参照)。偽造品や模倣品が店舗・オンラインにかかわらず販売されており、著作権分野でも、政策の不確実性および効果的でない執行がみられるとした。

本報告書では、新法や規則案制定にかかる透明性の欠如が理由で、インド市場の予測可能性が損なわれており、米国政府は2国間およびWTOなど多国間の場で本件懸念を提起し続けていると述べ、同国に関する記述を締めくくっている。

(片岡一生)

(米国、インド)

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