2022年度アジア大洋州各国通貨の騰落率、経済状況で明暗

(ASEAN、南西アジア、オセアニア)

アジア大洋州課

2023年04月03日

アジア大洋州地域の2022年度末(2023年3月31日)の通貨の騰落率をみると、多くの国で年度当初の2022年4月1日比で下落した。特に、パキスタンをはじめとした南西アジア諸国の下落が顕著となっている。パキスタンの下落率は域内最大の35.0%減だった。経済が堅調なベトナム、タイ、マレーシアなどASEAN主要国の通貨の落ち込み幅は限定的となっている。また、シンガポール、ブルネイの通貨は、多くの国の通貨が下落する中で上昇した(添付資料表参照)。

経済状況が深刻なパキスタンは、物価も上昇の一途をたどる中、外貨準備の減少ペースも早く、資金流出が加速した。下落率が30.9%減と2番目に高かったラオスも、同様の経済状況で、為替安が輸入コストを引き上るかたちで、経済は厳しい局面に立たされている。IMFの支援を受けたバングラデシュの通貨も19.3%下落した。同じく、IMFが支援するスリランカの下落率は10%弱だったものの、2021年度の32.1%減からは縮小し、経済危機の底打ちが期待される。

経済が比較的安定しているASEAN主要国の為替レートの下落率は限定的だった。下落率が4.5%にとどまるマレーシアの2022年の経済成長率は前年比8.7%と、22年ぶりの高成長を記録した(2023年2月4日記事参照)。下落率2.1%のベトナムの同年成長率(推計値)は前年比8.02%で、年初に公表した政府目標6.0~6.5%を達成した上に、1997年以来となる8%超えで、近年最も高い成長率を達成している(2023年1月10日記事参照)。名目為替実効レートの管理を通じた金融政策を実施するシンガポールは、金融引き締め路線を進めることで、為替レートは上昇した。

(新田浩之)

(ASEAN、南西アジア、オセアニア)

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