自動車周波数の制限やデジタルプラットフォーム規制策定の動きを懸念、米USTR2023年外国貿易障壁報告書(日本編)

(米国、日本)

米州課

2023年04月10日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に発表した2023年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2023年4月5日記事参照)で、日本について、輸入政策や貿易の技術的障壁(TBT)、植物衛生検疫(SPS)障壁、政府調達、知的財産権の保護、サービス分野の障壁、デジタル貿易の障壁、補助金、非競争的慣行などのほか、貿易協定、その他の障壁を取り上げた。

前年の報告書(2022年4月12日記事参照)と比べると、投資障壁の記載がなくなったほか、輸入政策では米国産牛肉に対する日本の緊急輸入制限(セーフガード)の記載がなくなった(注)。また、TBTでは、食品表示、サービス分野の障壁では銀行の保険販売、電気通信分野のドミナント規制、航空輸送サービス、デジタル貿易の障壁では個人情報保護法、補助金では酪農支援施策、その他の障壁では商法、パーソナルケア製品の記載が削除された。結果として、日本に関する記載全体では前年の18ページから13ページに減少した。

米国は引き続き、日本の自動車市場へのアクセスを著しく阻害するさまざまな非関税障壁に焦点を当てる予定だとし、特に懸念される障壁として、自動運転などに用いる狭域通信システムでの日本独自の周波数割り当てを挙げた。さらに、サービス分野の障壁では、リモート・キーレス・エントリーシステムで、日本は433.92メガヘルツ(MHz)帯を使用していない唯一の国と指摘し、米国の自動車メーカーは日本での販売のためにシステムを変更する必要があり、重大な非関税障壁になっているとした。

米国産農産物の対日輸出については、2020年1月に発効した日米貿易協定により、米国産農水産物の90%以上の関税が撤廃または特恵関税の適用を受けていると評価した。一方、SPS措置の障壁で、牛肉・牛肉製品における日本の特定危険部位(SRM)の定義が国際獣疫事務局(WOAH)のガイドラインより厳しいと指摘し、SRMの定義をWOAHのガイドラインと整合させることを引き続き求めていくとした。さらに、日本が食品衛生基準行政を厚生労働省から消費者庁へ移管することを検討していることに触れ、科学的根拠に基づく規制の意思決定と日本への食品輸出の公平な競争条件を継続的に確保するため、あらゆる法案や施行規則に関する審議を注視していくとした。

日米貿易協定と併せて2020年1月に発効した日米デジタル貿易協定については、国境を越えた情報伝達の円滑化など、高水準の条項が盛り込まれていると評価した。一方で、デジタル貿易の障壁で、日本が2022年10月に、これまで「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」の規制対象としてきた事業分野に加え、デジタル広告分野についても、大手デジタル事業者を「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定して規制を策定する動きに触れ、日本でサービスを展開するグーグル、メタなどの米国企業に影響を与え得るとの懸念を示した。公正なプロセスを確保し、将来の規制へ対処するために、引き続き今後の動向を注視していくとした。

(注)米国産牛肉の輸入を巡っては、日本政府が日米貿易協定に基づき、2021年にセーフガードを発動したが、2022年6月に日米両政府が発動条件を改定(2022年6月8日記事参照)し、同条件が2023年1月から適用されている。

(檀野浩規)

(米国、日本)

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