EUの2023年消費者実態調査、環境意識は高いものの行動伴わない点が浮き彫り

(EU、アイスランド、ノルウェー)

ブリュッセル発

2023年04月03日

欧州委員会は3月27日、EU加盟国とアイスランド、ノルウェーの消費習慣に関する「2023年消費者実態スコアボード外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。消費行動や消費者心理の動向などを追うため、同調査(注)は欧州委が隔年で行っており、今回2022年10~11月に実施し、エネルギー危機下の消費行動やグリーン、デジタル化への移行などに関するテーマも含まれた。

主な調査結果は以下のとおり。

生活コストの上昇について、回答者の48%は「住宅ローンや通勤費を含む日々の支払能力」に懸念を示した。また、回答者の37%は「貯蓄を切り崩した」とし、10人に1人は「変動金利の影響により住宅ローンの返済額が増えた」と回答した。

エネルギー価格の高騰に関しては、半数以上が「生活習慣を変えた」と回答。具体的には、「家庭内での省エネ」(回答者の71%)、「交通手段の変更」(28%)、「家庭内のエネルギーの効率的な利用を対象とした公的補助金の調査・活用」(27%)を挙げた。

また、グリーンへの移行に関する意識は高いものの、行動が伴っていない点が浮き彫りになった。回答者の72%は「グリーンへの移行や気候変動への取り組みに貢献するため、個人的にもっと努力すべきだ」とした。一方で、消費やサービス利用による環境への負荷が購入時の選択に影響を与えるかについては意見が分かれた。回答者の43%は「製品の購入を決定する際、環境負荷は全く影響しない」と回答した。一方で、回答者の20%は「購入する製品の全てもしくは大部分で環境負荷を考慮する」とした。消費者が環境負荷の重要性について認識する度合いは製品によって異なることも分かった。最も環境負荷を意識する製品は自動車(81%)、次いで家電、ガス(ともに78%)、電力(77%)だった。また、2020年調査と比べ、「環境への影響がない、あるいは他の製品より悪影響が少ないなどの製品表示を信頼する」と回答した消費者は5ポイント減の56%で、グリーンウォッシング(実質を伴わない環境訴求)に対する意識が高くなった。なお、欧州委は3月22日に、グリーンウォッシング防止のため、環境訴求に関する共通基準を設定する指令案を発表しており、対応に乗り出している(2023年3月30日記事参照)。

デジタル化に関しては、電子商取引の拡大により、消費者がオンライン上で不当行為にさらされることが増加していることが明らかになった。不当行為として最も多かった回答は、「個人を対象としたオンライン広告の表示」(76%)、「検索結果を利用した隠し広告」(75%)、「消費者レビューの偽り」(69%)の3つだった。特にオンライン広告に94%が懸念を示し、「個人情報の不適切な利用や共有」(70%)、「明示や同意がないままデータが収集され、不適切に利用される」(66%)、「クッキーの有効化」(57%)などを懸念点として挙げた。

(注)EU27カ国とアイスランド、ノルウェーの18歳以上の一般市民に電話で実施。

(大中登紀子)

(EU、アイスランド、ノルウェー)

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