ADB、アジア新興国・地域の2022年経済成長率を4.2%に下方修正

(ASEAN、中国、マレーシア、フィリピン、ベトナム、パキスタン、バングラデシュ)

アジア大洋州課

2022年12月28日

アジア開発銀行(ADB)は12月14日、「2022年アジア経済見通し」の補足版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、アジア新興国・地域(注)の2022年の実質GDP成長率を前年比4.2%とする見通しを発表、前回9月時の発表から0.1ポイント下方修正した(添付資料表1参照)。引き下げは、特に中国で新型コロナウイルス対策の「ゼロコロナ政策」による混乱、不動産市場の低迷を反映している。2023年については前回から0.3ポイント引き下げ、4.6%と予測した。

2022年、マレーシア、フィリピン、ベトナムは7%台の経済成長

東南アジアでは、2022年の成長率予測を9月時点の5.1%から0.4ポイント引き上げ、5.5%とした。マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムでの旺盛な消費活動や観光業の回復が寄与した。マレーシアは7.3%、フィリピンは7.4%、ベトナムは7.5%で、この3カ国の成長率予測は7%を超えた。一方、世界経済の減速に伴う需要の減少を背景に、東南アジアについて、2023年は9月時点の5.0%から4.7%に引き下げた。

南アジアの2022年成長予測は6.5%に据え置かれた。2023年は、パキスタンにおける洪水被害の影響、バングラデシュでの貿易赤字の拡大や高いインフレ率を反映し、9月時点の6.5%から6.3%に引き下げた。

2022年のアジア新興国・地域のインフレ見通しは4.4%

ADBはアジアの新興国・地域の2022年インフレ率の見通しを前年比4.4%と発表した(添付資料表2参照)。前回9月時点の4.5%から0.1ポイント引き下げた。地域別では、東南アジアは5.2%から5.1%に、南アジアは8.1%に8.2%に修正した。2023年のアジア新興国・地域全体のインフレ率見通しは、9月時点の4.0%から4.2%に引き上げた。

ADBは、中国での度重なるロックダウン措置、ロシアのウクライナ軍事侵攻の長期化、世界経済の成長停滞の影響を受け、アジア新興国・地域における新型コロナ禍からの成長回復が遅れていると指摘。一方で、世界の他の地域と比較した場合には、成長率、インフレ率ともに良好に推移すると分析している。

(注)アジア大洋州地域のうち、以下の46カ国・地域。

  • 東アジア:香港、モンゴル、中国、韓国、台湾
  • 東南アジア:ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、東ティモール、ベトナム
  • 南アジア:アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ
  • 中央アジア:アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン
  • 大洋州:クック諸島、ミクロネシア、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツ

(菊池芙美子)

(ASEAN、中国、マレーシア、フィリピン、ベトナム、パキスタン、バングラデシュ)

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