縫製工場「ラナプラザ」崩落事故から10年

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年04月21日

バングラデシュでは4月24日、2013年の同日に発生した縫製工場「ラナプラザ」崩落事故から10年を迎える。同事故では少なくとも1,132人の死者、2,500人以上の負傷者が確認され、世界的にみても例のない労働災害として注目され、政府やILO、国際的アパレルブランドなどの支援の下、縫製工場の建築構造や火災、電気などの安全性を担保する取り組みが急速に進む要因となった(2021年10月8日付地域・分析レポート参照)。

現在、主要輸出先である欧州向けの生産工場の検査や指導などの役割を担う既製服産業持続可能性協議会(RSC)を立ち上げた、バングラデシュ最大の業界団体の縫製品製造業・輸出業協会(BGMEA)は約4,500社の会員企業に対し、気温の上昇(2023年4月13日記事参照)によって発生し得る電源障害による工場爆発や火災事故への注意を呼びかけている(「フィナンシャル・エクスプレス」紙3月24日)。

ラナプラザの崩落事故を契機に、バングラデシュを関税優遇措置の対象外としている米国のピーター・ハース駐バングラデシュ大使は、労働者の安全の担保には政府や発注元ブランド、製造会社、労働者、労働組合、消費者のそれぞれが重要な役割を担っているという認識も重要とした上で、同国の後発開発途上国(LDC)卒業に向けて、縫製業以外の産業でも、労働環境の安全性向上や人権尊重が必要と指摘する(「フィナンシャル・エクスプレス」紙4月13日)。

ジェトロの調査PDFファイル(2.0MB)によると、バングラデシュ進出日系企業の約4割は人権デューディリジェンスを実施しており、他国の同調査結果と比べて対応割合は高い状況にある。その中で、日本は経済産業省による「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの策定(2022年9月)や、ILOとジェトロによる中谷元・首相補佐官(国際人権問題担当)を招いたビジネスと人権に係るワークショップの開催など、関連の取り組みを進めている。

国際NGOのアクションエイド(ActionAid)が4月15日に発表した調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、同崩落事故の生存者のうち54.5%は事故による身体の問題で、就労再開に至っていない。同国の産業全体の労働環境の安全性、労働者の人権の課題は引き続き国内外から注目されるだろう。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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