2023年の中東・北アフリカの予測成長率は3.0%に減速、食糧価格高騰が影響

(中東、アフリカ)

中東アフリカ課

2023年04月13日

世界銀行が4月6日に発表した中東・北アフリカ(MENA)地域の経済アップデート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、MENA地域の経済成長のペースは鈍化することが予測されている。実質GDP成長率(注1)は、2022年の5.8%(推計値)から、2023年は3.0%、2024年は3.1%となる見込みだ。2023年1月時点の世界銀行の「世界経済見通し」から、2023年は0.5ポイントの下方修正、2024年は0.4ポイントの上方修正となった(2023年1月16日記事参照)

世界銀行は成長減速の理由として、ロシアによるウクライナ侵攻を背景とした食糧価格の高騰を挙げている。同報告書によると、MENA地域14か国(注2)のうち、エジプト、アルジェリア、チュニジア、モロッコ、バーレーン、ジブチの6カ国では、2022年3月から12月の食糧インフレ率(前年同月比)の平均が2桁台となった。特にエジプトでは25%を超えている。食糧インフレ率の上昇は栄養失調による子供の発育阻害を招き、世代を超えて長期的な悪影響を及ぼすとしている。

国・地域別に見ると、2023年の実質GDP成長率予測は、石油輸出国(注3)は2.8%で、MENA地域全体と比べて低いが、湾岸協力会議(GCC)諸国では3.2%、そのうち最も成長率が高いのはオマーン(4.3%)だ。石油需要が弱まっているのにもかかわらず、オマーンが比較的高い成長率を維持する理由として、特に新たな天然ガス田の開発によって、炭化水素の生産能力が向上したことが挙げられている。一方、MENA地域で最も低い成長率が予測されているのはイランとアルジェリアで、ともに2.0%となっている。イランについては、経済制裁や水・電気の不足、不安定な政情がその理由にあるとしている。

MENA地域の石油輸出国の2023年の実質GDP成長率予測は以下のとおり。

【GCC】

  • カタール:3.3%
  • アラブ首長国連邦(UAE):3.6%
  • クウェート:2.7%
  • バーレーン:3.1%
  • サウジアラビア:2.9%
  • オマーン:4.3%

【その他の石油輸出国】

  • イラン:2.0%
  • イラク:2.8%
  • アルジェリア:2.0%

なお、4月6日付ロイター通信によると、同報告書は4月2日にOPECプラスが追加減産を発表(2023年4月5日記事参照)する前にまとめられており、世界銀行はその影響について、予測には反映されていないとしている。

(注1)カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、バーレーン、サウジアラビア、オマーン、イラン、イラク、アルジェリア、エジプト、チュニジア、ヨルダン、モロッコ、ジブチ、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の15カ国・地域について算出。

(注2)注1の15カ国・地域からイランを除く。

(注3)アルジェリア、バーレーン、クウェート、イラン、イラク、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAE。

(久保田夏帆)

(中東、アフリカ)

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