米ニューヨーク国際オートショー、規模縮小の中、EV体験に焦点
(米国)
ニューヨーク発
2023年04月24日
米国のニューヨーク国際オートショー(NYIAS)が4月7~16日、マンハッタンのジャビッツセンターで開催された。出展メーカー数は前年の3分の2程度の20ブランドに減少。2019年(注)に比べるとほぼ半減し、展示会場も2フロアから1フロアにダウンサイズするなど、オートショーの規模縮小傾向は続いている。
NYIASでは毎年、ワールド・カー・アワードの受賞式が行われる。世界の自動車ジャーナリストが2022年に世界各国・地域で発売される新車を評価する。2023年は6部門中5部門でバッテリー式電気自動車(BEV)が受賞した。中でも、現代のBEV「アイオニック6」はワールド・カー・オブ・ザ・イヤーに加えて、EV部門、デザイン部門の3部門で首位となった。さらに、同社のエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼デザインセンター長のサンヤップ・リー氏がパーソン・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。残りの3部門では高級車部門にルーシッド・モータースのBEV「エア」、パフォーマンスカー部門で起亜のBEV「EV6」が受賞。唯一のガソリン車はアーバンカー部門のシトロエン「C3」のみだった。米国のBEV販売台数は2023年第1四半期(1~3月)で全車の7.2%にすぎず(2023年4月13日記事参照)、普及の見通しはいまだ不透明なものの、BEVに対する専門家の期待は大きい。
ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した現代の「アイオニック6」(ジェトロ撮影)
会場では、これまで展示会場だったフロアにGM「ボルト」、フォード「マッハE」、日産「アリア」、現代「アイオニック6」、起亜「ニロ」、フォルクスワーゲン「ID.4」、BMW「iXM50」など、人気BEVの試乗スペースを前年より面積を拡大して設置。トヨタが屋外に敷設した「bZ4X」の試乗コーナーも盛況だった。オンライン販売が今後増え、ディーラーでの試乗機会が減ることが予想される中で、モーターショーは気軽にBEVを体験できる新たな装置として機能することも期待される。米市場調査会社JDパワーの調べでは、乗車体験がBEV購入に一定の役割を果たしていることも分かっている(2022年6月3日記事参照)。自動車コンサルティング会社オートパシフィックの代表兼チーフアナリストのエド・キム氏は「人々はまだ車両に触れて感じる必要がある。 オートショーは、ディーラー訪問では得られない、さまざまな競合モデルを短時間で並べて見ることができる機能を提供する」とモーターショーの可能性に期待する(デトロイトビューロー3月2日)。
会場内に設置された試乗スペース(ジェトロ撮影)
今回のショーがBEVに焦点を当てる一方で、BEVの米販売台数の6割以上を占めるテスラや、新興メーカーのリビアン、ルーシッド、ポレスター、米国展開が注目されるベトナムのビンファストといったBEVメーカーは出展しておらず、BEV市場の全容を知る上での情報は十分とは言えない。進むEVシフトにオートショーが今後どう対応するのか注目される。
(注)2020年、2021年は新型コロナウイルスのパンデミックの影響で中止となった。
(大原典子)
(米国)
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