次にEV購入の可能性「非常に高い」増加も課題は販売価格、米民間調査

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月03日

米国市場調査会社JDパワーが行ったアンケート調査「EV購入における新型モデルの影響」(注1)によると、次に購入する車両としてバッテリー式電気自動車(BEV)を検討する消費者が前年に比べ増加していることが分かった。同社は、各メーカーが販売するBEVモデル数が増加し、消費者の選択肢が増えたことが背景にあるとみている。BEVのモデル数は、2021年の22から2022年には38(いずれも第1四半期に販売されたモデル数)と大幅に増加している。

次に購入する車両としてBEVを選ぶ可能性が「非常に高い」と回答した人は、前年の20%から24%に上昇した。そのうち、58%がこれまでに運転手や乗客としてBEVに乗車した経験があると答えており、乗車体験が購入を検討するに当たって一定の役割を果たしていることが分かった。高級車を所有している人のうち、次にEVを購入する可能性が「非常に高い」と回答した人は、前年(36%)とほぼ同水準の37%だったが、大衆車を所有する人の間では前年から15%から21%に上昇しており、より手頃な価格帯を好む購入者層の存在を示唆した。

また、自動車オンライン販売サイトのオートリストが、顧客を対象に実施した別の調査(注2)によると、BEVを購入する上での最大の障壁は「価格の高さ」と答えた人が全体の48%と最も多く、前年の調査で最も割合の高かった「走行距離に対する懸念」を上回る結果となった。また、66%が連邦政府や地方自治体による補助金などが購入を後押しすると回答し、42%が現在メーカーに課されているEV税額控除の上限(注3)に反対すると回答した。車両価格に関しては、同社最高経営責任者(CEO)のコーリー・リズストーン氏が、サプライチェーンの混乱やインフレ、バッテリー価格の上昇による上乗せ分は既に消費者に転嫁されていると言及。バッテリーの供給不足が懸念される中で、価格の上昇はEV普及にとって大きな課題とみている。購入したい車種のタイプに関しては、ガソリン車でも主流の中型クロスオーバーSUV(スポーツ用多目的車)と回答した人が最も多く、続いてピックアップトラック(PU)となった。PUに関しては、2022年5月にフォードのBEV「ライトニング」が顧客に出荷され始め、GMの「シルバラード」、ステランティスの「ラム1500」、トヨタの「タコマ」など、人気モデルがBEV市場に投入されると報じられており、これもBEV普及の後押しとなることが予想される。

(注1)調査期間:2022年2~4月。調査対象数:1万30人。

(注2)調査期間:2022年4月11日~5月18日。調査対象数:1,355人。

(注3)各メーカー当たりの控除対象車両は、累積販売台数で20万台に限定されている(2018年11月26日記事参照)。

(大原典子)

(米国)

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