Hmlet Japan、日本で外国人のニーズに合った住居を展開

(シンガポール、日本)

アジア大洋州課

2023年04月19日

シンガポールの大手コリビング事業者「ハムレット(Hmlet)」と三菱地所の合弁会社「ハムレット・ジャパン(Hmlet Japan)」は2019年12月に第1号の物件「ハムレット渋谷松濤」を開業して以降、東京都内に物件の展開を拡大している(2020年2月26日付地域・分析レポート参照)。日本での今後の展開について、ジェトロは2023年1月26日、ハムレット・ジャパン代表取締役の佐々木謙一氏にインタビューを行った。概要は以下のとおり。

(問)2019年12月に日本第1号の物件を開業した。その後の日本での展開は。

(答)東京都内に2023年1月時点で合計480室(24棟)の物件を運営している。うち20室は2023年1月にオープンした。オープンしたばかりの20室を除くと、約98%という高い稼働率だ。

(問)新型コロナウイルスの影響によって貴社の顧客層に変化はあったか。

(答)日本政府が2022年10月11日から1日当たりの入国者数上限を撤廃するとの発表をして以降を「新型コロナ禍後」と定義すると、それ以前は居住者の約半数が日本人で、稼働率が70%という状況だった。新型コロナ禍後は、居住者のうち外国人が70%、日本人が30%、稼働率が98%となった。現在も引き続き活発に海外からの入居申し込みが入っている。

(問)ハムレットの特徴は。

(答)シンガポールのハムレットは2022年4月から、欧州企業の傘下に入っており(注)、欧米で知名度が高いと感じる。居住者の外国人からは、日本に住んだ感想として、居住する土地でのコミュニティー作りが難しいと聞く。外国人が当社のコリビングに意識を向けている理由は、(支払いを含めて全てオンラインで契約手続きを完了して入居できる)意思決定の速さと、言語的なフォローが受けられる点、当社主催のコミュニティーイベント(週1回開催)に魅力を感じていると分析している。

(問)入居する利用者層は。また、他の事業者との差別化は。

(答)現在は主に北米や欧州、シンガポールの顧客が日本へ来る際に利用している印象だ。ハムレットがブランドとして認知されていることが理由と考える。日本でコリビングのサービスを提供する事業者は少ない。中でも、長期滞在可能なコリビング事業を提供する事業者は今のところほとんどない。

日本には、シンガポールのコリビング事業者「ライフ(lyf)」も進出し、短期滞在も受け入れている。当社は1カ月以上の滞在に絞ってサービスを提供しており、滞在期間の面で差別化できていると考える。

写真 ハムレット・ジャパンの施設とバルコニー(同社提供)

ハムレット・ジャパンの施設とバルコニー(同社提供)

(問)貴社は東京都内に展開しているが、他の都市への展開可能性は。

(答)2024年以降に福岡や大阪などの都市への展開を検討している。例えば福岡市だが、海外スタートアップ(SU)の誘致に市を挙げて取り組んでいる。担当者に聞いたところでは、海外SUで働く外国人の住宅の受け皿に課題を感じているようだ。外国人の家探しの悩みでよく聞くのが、銀行口座や保証会社の審査の問題だ。日本の住宅を借りるには、家賃振り込み用の銀行口座が必要なことが多い。また、日本で住宅を借りる際には保証人を用意する必要があるが、それが難しい場合は保証会社に保証を依頼する。保証会社にも審査があり、外国人にとっては、日本で賃貸物件を借りることは難しい。当社では、クレジットカードがあれば、銀行口座がなくても物件を借りられる。当社としても、外国人の家探しの悩みをサポートしながら、自治体とも協業していきたいと考える。

(注)ハムレットはシンガポールで創業した企業だが、2022年4月から欧州を中心にコリビング事業を展開する「Habyt」社の傘下に入っている。

(糸川更恵)

(シンガポール、日本)

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