欧州食品飲料産業連盟、EUに持続可能な食品生産への支援拡大を強く訴え

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月24日

欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)は3月21日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長らに宛てた書簡(3月15日付)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表し、農業・食品部門の持続可能性向上への取り組みに対する迅速な支援や投資を求めた(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。同連盟は、EU産業の競争力強化を目指すグリーン・ディール産業計画(2023年2月3日記事参照)では、同部門の持続可能な食品生産への取り組みに対して十分な支援が与えられていないとの懸念を表明し、EUに対して「食料生産への投資と強靭(きょうじん)化計画」の策定を求めた。

書簡では、同計画は(1)より持続可能な食品生産に向けて官民投資を引き起こすこと、(2)農産品・食品生産のイノベーションや最先端技術への投資の奨励、(3)新たな市場の開拓も含め、EU産品の輸出促進、(4)欧州委の食品行政関連の部署を統合して新組織を立ち上げ、政策の一貫性や事業者の負担軽減を実現の4項目を柱として、欧州の農業・食料品部門の国際競争力を高め、強靭化を実現するものだとしている。

EUでは2023年から新たな共通農業政策(CAP)を実施し(2021年7月1日記事参照)、環境に配慮した生産に取り組む農業事業者への支援を手厚くしているほか、2020年に発表した食品産業政策「Farm To Fork戦略」(2020年8月28日付地域・分析レポート参照)などを通じて、より持続可能な食品生産への移行に向けた取り組みが実施されている。しかし、同連盟は、米国がインフレ削減法(IRA)で農業分野での気候変動対策に約200億ドルを拠出するのと比較すると、EUの持続可能な食品生産への移行に向けた公的支援は不十分で、民間投資の引き起こしもできていないと主張した。より持続可能な農業生産への移行には1年当たり約80億ユーロの新たな投資が必要としたほか、欧州委が包装材・包装廃棄物規則案(2022年12月2日記事参照)で包装材のリサイクルをさらに促進するとしたが、食品衛生基準に適合する包装材の使用が求められる同部門にとっても、食品用包装材を扱うリサイクル関連のインフラ整備やケミカル・リサイクル(注)への投資拡大が重要だと訴えた。また、現時点でEUからの支援拡大にまず重点が置かれるべきだが、次期中期予算計画(MFF)やCAPの策定に当たっては、農業・食品部門の移行に対するさらなる資金支援策を議論することが必要となるとした。

同連盟は、米国が気候変動対策に取り組む農業事業者(畜産部門も含む)や森林所有者に対する支援の一環として、約10億ドルを投じて輸出促進に取り組んでいることを指摘し、EUもこれまで以上に世界市場でEU産品を普及させなければならないと述べた。例えば、同連盟は2022年12月、ASEANとの通商関係の深化をEUに求めていた(2022年12月13日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、農産物・食品の重要なグローバルサプライチェーンについて情報収集(マッピング)をすることで、欧州の食品生産にとってのリスク要因の特定をさらに進めることや、EU域内、域外市場双方での不公正な貿易慣行に対しては強力かつ迅速な対応を取ることが必要だとも指摘した。

(注)廃プラスチックを化学的に分解し、化学製品の原料として再利用すること。

(滝澤祥子)

(EU)

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