全人代、2023年は内需拡大や外資誘致が重点分野に

(中国)

北京発

2023年03月06日

中国で3月5日、第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議が開幕した。李克強首相は「政府活動報告」で2023年の政府活動の重点分野として8項目を挙げた。2022年はマクロ経済の安定を上位に置いていたが、2023年は内需拡大や産業の高度化、企業の発展促進、外資誘致などが重点とした(注1、添付資料表参照)。

概要は以下のとおり。

(1)内需拡大に力を入れる。

(2)現代化産業システムの構築を加速する。

(3)「2つの揺るぐことなく」(注2)を着実に実施する。

(4)外資の誘致・利用に力を一層入れる。

(5)経済・金融分野の重大リスクを効果的に防止・解消する。

(6)食糧生産を安定させ、農村振興を推進する。

(7)発展パターンのグリーン化を推し進める。

(8)基本的民生を保障し、社会諸事業を発展させる。

(1)の内需拡大については、住民の所得増加や、耐久財の消費安定、個人向けサービス消費の回復などを目指すとしている。また、地方特別債(専項債、注3)の発行限度額を3兆8,000億元(約76兆円、1元=約20円)とし、前年から1,500億元増加させる。2022年は不動産開発投資(前年比8.4%減)が減少する中、インフラ投資(9.4%増)が固定資産投資(4.9%増)を下支えした。2023年も引き続きインフラ投資による押し上げが予想される。

(4)外資誘致では、現代サービス業(注4)の開放や外資系企業に対する内国民待遇の徹底のほか、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)への加入交渉推進などを盛り込んでいる。また、外資系企業へのサポートを強化し、重要プロジェクトの実施を促すとしている。

(5)に関しては、大手不動産企業の経営危機に対処し、無計画な経営拡大を防ぐとしている。

外資誘致について、報道では、電信や文化、医療などの分野で参入規制緩和が進むとともに、政府調達、標準策定などへの外資系企業の平等な参加に向けた措置が取られるだろうとの見方が紹介されている(「中国新聞網」3月5日)。

また、国務院研究室の向東副主任は「外商投資奨励産業目録」(2022年11月4日記事参照)の対象となる投資への税や土地利用の優遇などを提案している(「新華網」3月5日)。

(注1)近年の政府活動報告では、外資誘致は対外開放の一部として、もしくは同じ項目で並列して盛り込まれていた。また、中国語原文では(1)~(5)の各項目のタイトルは、2022年12月に開催された共産党中央経済工作会議の発表と全く同じ表現となっている。

(注2)公有制経済を揺るぐことなく強固にし、発展させ、非公有制経済の発展を揺るぐことなく奨励し、支援し、誘導することを指す。

(注3)省、自治区、直轄市などが収益性のある公益プロジェクト実施を目的として発行する地方債券。プロジェクトに対応する政府基金収入、もしくはプロジェクトの収入により元利を返済する。主にインフラ投資などに使用される。

(注4)情報通信・ソフトウエア・情報技術、金融、不動産、ビジネスサービス、教育など。

(河野円洋)

(中国)

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