日本産精米の輸入解禁と検疫条件を公開、米国産米との競争力にも期待

(メキシコ、日本、米国、ウルグアイ)

メキシコ発

2023年03月17日

メキシコ政府は316日、全国農業食料衛生無害性品質サービス機構(SENASICA)のウェブサイト上において、日本産精米の輸入解禁および検疫条件を外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注)。それを受け、農林水産省は日本時間の17日、メキシコ向け日本産精米の輸出検疫条件の概要を外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。検疫条件に関するポイントは以下のとおり。

  • 日本の植物防疫所の植物防疫官による輸出検査により、(1)土壌、雑草種子、および植物残渣(ざんさ)の混入がないこと、ならびに(2)コクヌスト(貯蔵穀物害虫、Tenebroides mauritanicus)が不在であることの確認を受け、植物検疫証明書が添付されること。
  • 植物残渣がなく、病害虫がいない清潔なコンテナーにより輸出されること。
  • 新しく清潔な資材によって密閉包装され、会社、原産地およびバッチ番号(製造ロット番号)の表示による識別が可能であること。

なお、日本産精米の輸入解禁は商業貨物を対象としており、空路や陸路でのハンドキャリーによるメキシコへの持ち込みは該当しない。また、日本国内の精米工場の指定はなく、燻蒸(くんじょう)処理は不要。関税割当枠に関する設定や、東京電力福島第1原発事故に関連した規制もない。

米国産米の輸入価格が3年で約1.5倍に

メキシコの外国産の精米(HS1006.30)輸入量は年間71,596トン(2022年)で、そのうち米国産が62.2%(44,533トン)、ウルグアイ産が35.0%(25,040トン)、アルゼンチン産が1.7%(1,951トン)、イタリア産が0.1%(73トン)と輸入相手国は少ない(添付資料表参照)。他方、1キロ当たりの平均輸入価格をみると、米国産は2019年に0.7ドルだったが、2022年には約1.5倍の1.04ドルまで上昇した。ウルグアイ産も0.56ドルから35.7%増の0.76ドルに上昇した。米国産米の取引価格が高騰している原因は、一大生産地のカリフォルニア州における水不足に起因する作付面積の大幅減少と、コメ生産農家による潅水量が少なくて済む作物への転作だ(202267日記事参照)。水不足が解消されたとしても、水田自体の減少により、収穫量の増加を見込むことは難しい。

メキシコの輸入精米市場の6割以上を占める米国産の、価格上昇傾向により、今回輸入解禁に至った日本産精米は、品質面のみならず、価格面でも米国産との競争力を持つ可能性がある。メキシコへの精米輸入時の一般税率(MFN)は20%だが、米国産米には米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を、ウルグアイ産米にはメキシコ・ウルグアイFTA(自由貿易協定)(ACE60号)が適用でき、無関税で輸入が可能だ。日本とメキシコ間では、日本・メキシコ経済連携協定(EPA)と、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)が発効済みだが、前者では精米が関税削減対象品目ではない。TPP11の関税削減の起点となる税率(ベースレート)は20%で、201812月の発効時点から、毎年2%幅ずつ削減されている。2023年が8%、24年が6%、25年が4%、26年が2%、27年以降が0%となる。米国産との競争力をさらに高めるには、TPP11の活用が重要だ。

画像 SENASICAポータル画面(ジェトロ撮影)

SENASICAポータル画面(ジェトロ撮影)

(注)SENASICAの植物検疫検索ポータル画面において、以下のとおり入力すると、メキシコ向けの日本産精米の検疫条件が入手可能。

(志賀大祐)

(メキシコ、日本、米国、ウルグアイ)

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