2023年予算案、歳出は2022年を下回る、個人や中小企業に優遇措置も

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年10月14日

マレーシア財務省は10月7日、2023年国家予算案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、連邦議会下院に提出した。10月10日にイスマイル・サブリ首相が下院議会の解散を発表したため(2022年10月12日記事参照)、新内閣発足後に予算案は再提出されるが、内容に大きな変更は生じない見通し。

予算案の歳出総額は前年の歳出実績から3.4%減の3,723億リンギ(約11兆5,413億円、1リンギ=約31円)、歳入は4.4%減の2,726億リンギとなった。財政健全化により、財政赤字の対GDP比率は2022年の5.8%から5.5%へ、わずかに縮小する見通しだ。

同日に発表した経済見通しで財務省は、マレーシアの2022年のGDP成長率を6.5~7.0%と予測した。2023年には、インフレ圧力や金融引き締め、地政学的リスクの高まりにより、成長率は4~5%へ鈍化すると見込んでいる。

総選挙意識した予算構成

予算案では、下院総選挙もにらみ、個人や中小企業向けの優遇措置を多く盛り込んだ。課税所得5万1リンギ以上の中所得層向けの減税措置として、所得に応じて個人所得税率を引き下げる。中小企業に対しても、年間所得10万リンギまでの法人税率を15%とし、現行の17%から引き下げる。他方で、議論を呼んでいた消費税の導入に関しては、2023年予算案には盛り込まなかった。

歳出の内訳をみると、公務員給与や物品・サービス調達費などの一般歳出が前年比4.3%減の2,723億リンギ(添付資料表参照)。公共投資を中心とした開発支出は32.3%増の950億リンギへ大きく増加した。開発支出の内訳として、運輸が最大で16.7%増の165億リンギ、教育・研修が9.2%増の128億リンギと続く。例えば、大型インフラプロジェクトとしては、パン・ボルネオ高速道路、高速都市鉄道(RTS)、大量輸送システム(MRT)などに予算を措置する。教育関連では、技術・職業教育訓練(TVET)プログラム実施に67億リンギを投じる。

新型コロナウイルス特別措置法の下で設置した特別信託基金は82.6%減の50億リンギへ大幅に縮小し、エンデミック(一定期間で繰り返す流行)への移行色も鮮明となった。

カーボンニュートラル化を見据えた優遇措置も

新規に導入する優遇税制としては、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)を実施する企業に対する投資税額控除や、電気自動車(EV)充電設備の製造に対する優遇税制、製造業・サービス業の自動化の優遇措置の上限額引き上げ(注)、グリーン優遇税制の延長、電気電子製造業の事業移管に関する優遇措置の延長などを盛り込んだ。

脱炭素への取り組みに関しては、上記のほかにも、EV完成車輸入にかかる関税と物品税の免税期間を2024年末まで1年間延長するほか、上述のCCSを行う企業は、同技術のための機器輸入に掛かる関税と売上税を減免する。

(注)製造業企業は現在、自動化機器の購入に対して、カテゴリー別に優遇を受けられる(ジェトロ「外資に関する奨励>各種優遇措置」参照)。優遇対象となる適格資本的支出の上限は400万リンギとしていたが、これを1,000万リンギまで引き上げることを提案している。2027年末までに投資開発庁(MIDA)が受領した申請が対象となる。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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