欧州産業界、重要な原材料法案を歓迎、負担軽減やリサイクル普及に向けた要望も

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月24日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は3月16日(注)に声明を発表し、欧州委員会の重要原材料法案(2023年3月22日記事参照)について、「幸先の良いスタート」と歓迎したうえで、企業にとって実行可能なものとするため、今後のEU機関での審議において改善が必要だとした。同連盟は、同法案ではEU域外の供給元の多元化と域内で原材料を確保する手段の増加を同時に達成するために具体的な方策を示す必要があると指摘。また、企業の負担増を懸念して、例えば情報開示に関する要件は最低限とすることを要望した(ビジネスヨーロッパのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

欧州自動車工業会(ACEA)も法案を歓迎しつつも、サプライチェーンの一部で許認可手続きを簡略化することで、同じサプライチェーン上で報告や評価についての負担が増える企業が出る可能性があると指摘。域内生産量の目標値の設定には賛同したが、「今後の審議過程で骨抜きにされる恐れもある」と警戒感を示した。供給元の多元化については、EUは米国などと「原材料クラブ」を創設するなど、第三国・地域との協力の深化に向けた努力を求めた(ACEAのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

欧州非鉄金属業協会(EUROMETAUX)は「早期に施行されれば、EUの原材料政策にとって、まさしくパラダイムシフトとなりうる」と法案を歓迎。一方で、「戦略的原材料リストにアルミニウムや銀などエネルギー移行に必要な金属が含まれなかった」と指摘し、エネルギー移行とデジタル化に必要な金属全てが同法の対象となる必要があるとした。また、生産量の増加に向けて、関連投資の拡大のためのEUや加盟国による事業への支援の強化や許認可手続きの迅速化だけでなく、EUはエネルギー価格の高騰などで生産が停滞している同業界がさらされている他の構造的な課題にも取り組むべきだとした(EUROMETAUXのプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

リサイクル原材料の普及推進の方針も歓迎される

同法案では、重要原材料のリサイクルにも力点を置いている。欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)は「2030年までに域内消費量の15%を域内産リサイクル原材料とする」という目標の導入を支持すると同時に、リサイクルされた重要原材料への需要を増やすためには、最終製品のリサイクル原材料の含有量目標を導入することが必要だと指摘。同法案で目標が設定された永久磁石を皮切りに、今後、重要原材料を使用する他の最終製品も対象にしていくべきだとした。また、リサイクルの推進には、リサイクル原材料とバージン原材料の間の公正な競争を担保し、関連技術の研究開発を促進する施策や、エコデザイン規則案(2022年4月4日記事参照)といった循環型経済への移行関連の他のEUの法令と連動させた取り組みを求めた。技術開発や欧州発のイノベーションの創出に向けて、EUなどからの資金支援やリサイクル企業の投資に対する安定的な融資も必要不可欠だと訴えた(EuRICのプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

欧州風力協会も、風力タービンに使用される永久磁石について目標の導入を歓迎したが、ブレードに必要なガラス繊維製品が法案の対象とならなかったと指摘。同製品も域外からの輸入に大きく依存しているが、ドイツなどでリサイクル可能なブレードの利用が始まっているとして、EUとして対応が必要だとした(欧州風力協会のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(注)各産業団体の発表は、3月17日付だったACEAを除き、全て3月16日付。

(滝澤祥子)

(EU)

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