供給網逼迫状況の指標GSCPI、2月はマイナス0.26で急回復

(米国、ウクライナ、ロシア、中国)

ニューヨーク発

2023年03月07日

米国のニューヨーク連邦準備銀行(NY連銀)は36日、グローバルサプライチェーン圧力指数(GSCPI)を更新外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、2月はマイナス0.26になったと明らかにした。GSCPIは世界の供給網の逼迫状況を数値化した指標で、データ期間の平均をゼロとし、値が大きいほど供給網が逼迫している状況を表す(2023年1月11日記事参照)。GSCPIがマイナスとなるのは新型コロナウイルス禍前の201912月以来。

最近のGSCPIについて、20229月(0.95)に下げ止まると、中国のゼロコロナ政策緩和による混乱などが影響した202212月(1.19)にかけて上昇し、20231月も0.95と回復基調に足踏みが見られていた。しかし、2月のGSCPIは前月から1ポイント以上の急回復に転じ、過去平均を下回るマイナス圏まで回復し、NY連銀は「供給網逼迫は正常に戻ったことが示唆される」としていた。回復要因として、欧州地域での納期期間の改善が最も大きかったという。

GSCPIのほかでも、供給網逼迫の解消を示す指標が目立つ。原油価格の代表的指標の米WTI先物価格は、足元では7580ドル程度で推移しており、ピーク時の約120ドル超からは約4割低下、ロシアによるウクライナ侵攻前の20221月ごろの水準にまで戻った。船のコンテナ運賃も低下しており、英国調査会社ドリューリーによると、上海からロサンゼルスまでの貨物(40フィートコンテナ)輸送コストは20221月中旬につけた年最高値約11,200ドルに比べ(2022年9月9日記事参照)、32日時点で2,000ドル弱と、6分の1の水準にまで低下している。

一方で、エネルギー価格の低下は、欧州での記録的な暖冬によって暖房などエネルギー需要が今冬は抑えられたという要因があり、ウクライナ情勢の先行きがいまだ見通せない中、原油価格はじめ今後もエネルギー価格が安定し続けるかは不透明だ。加えて、新型コロナ禍からの中国のさらなる経済正常化による需要の増加は今後、供給網を逼迫させる可能性もあり得る。不安定な状況が続く中、引き続き供給網の逼迫状況には留意し続ける必要がありそうだ。

(宮野慶太)

(米国、ウクライナ、ロシア、中国)

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