国際機関などが地震の経済への影響を予測
(トルコ)
イスタンブール発
2023年03月08日
トルコ国内で4万5,000人以上もの犠牲者を出した大地震は、2023年のトルコ経済全体にも影響を与えることが予測される。2月6日の大地震に続いて、20日にもマグニチュード6.3規模の地震がハタイ県を襲い、被害はさらに拡大した。直接的な被害総額について、米国の金融大手JPモルガンはGDPの2.5%に相当する250億ドルと推計(2月17日付ロイター)、世界銀行はGDPの4%に相当する342億ドルと見込んでいる。世界銀行は、2023年のGDP成長予測は震災前の予測値(3%超)から0.5%ほど下方修正されるだろうとしている(2月28日付ロイター)。
被災地10県のGDPのシェア(2021年)はトルコ全体の9.3%、最も被害が大きかったハタイ、カフラマンマラシュ、アドゥヤマンの3県のシェアは2.6%だ。輸出(2022年)でも10県で全体の8.5%、3県では2.2%だ(2023年2月17日記事参照)。
IMFのマフムド・モヒルディン理事は、イスタンブール近郊の工業地域を直撃した1999年のマルマラ大地震の時ほどにはGDPへの影響は大きくないとし、復興に向けた公共・民間の投資も見込まれると述べた(2月12日付ロイター)。トルコ中央銀行は2月23日の金融政策会議で、「震災後の必要な回復を支えるため」、50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを決定し、政策金利(1週間物レポ金利)を9.0%から8.5%に引き下げた。
被災県からの人口流出は深刻で、近隣のメルスィン県には既に100万人規模の移動がみられ、住宅価格が高騰している。これは被災地の労働力不足にも直結する。また、被災地域が野菜や果物など農産物の生産地でもあることから、供給不足による物価への影響が懸念されている。これらの経済成長やインフレへの影響の度合いは現状では未知数だが、エコノミストの間では、食品や住宅の価格上昇がインフレ抑制を阻害すると見られている。
(中島敏博)
(トルコ)
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