トルコ南部での地震による地域産業の被害状況

(トルコ)

イスタンブール発

2023年02月17日

レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は2月9日、2月6日にトルコ南部で発生した地震(2023年2月8日記事参照)の被災地10県に、3カ月間の非常事態宣言を発表した。世界銀行による約18億ドルの支援をはじめ、日本を含めた諸外国からは多くの支援や救助隊の派遣が行われているが、2月16日時点の報道によると、トルコの犠牲者は3万6,000人以上となり、シリアでの犠牲者を含めると4万2,000人を超えている。

トルコ企業・経営者連合の試算によると、今回の大地震の経済的影響は840億ドル超となる見込みだ。また、2月12日付のブルームバーグHTによると、政府の地震災害に対する支出がGDPの5.5%相当、財政赤字が同5.4%を超える可能性があるという。

被災地10県にはトルコ総人口8,528万人のうち、約1,342万人が住んでいる(添付資料表参照)。現地経済紙(2月8日付エコノミム)によると、被災地10県には57の公認工業地域(OSB)があり、うち36カ所が稼働していた。アドゥヤマンOSBと、カフラマンマラシュ県のテュルクオールOSBで、合計11棟の工場が倒壊したとしている。36カ所のOSB従業員は合計53万9,600人で、トルコ全土のOSB従業員数の21%を占める。

被災地10県からは2022年にトルコ全体の8.5%となる約216億ドルを輸出していたが、地震の影響で約70億ドル(2022年のトルコ総輸出額の約3%)の損失が予測されている。

各地域で産業・インフラに被害

シリア国境に接したハタイ県は、トルコ大手鉄鋼企業が工場を構える鉄鋼産業の集積地の1つだが、主要鉄鋼工場は生産を停止し、再開のめどは立っていない(2月13日、2月14日付エコノミム)。イスケンデルン港では、火災発生(現在は鎮火)などの被害が報告されており、物流への影響が懸念される。ハタイ空港も滑走路が損傷し、2月13日時点で大型機の離着陸はできないという。

繊維・衣料品やプラスチックなどの産業集積地であるガズィアンテプ県では、生産施設への被害は限定的とみられるが、ガス・電力網の供給停止や労働力不足で生産が停止している。トルコ西部の工場での代替生産も検討されている。綿糸の主要生産地であるカフラマンマラシュ県も同様の状況で、綿糸を原料とする繊維製品生産にも影響が見込まれる(2月13日付エコノミム)。

他方、日系企業も進出しているアダナ県の生産施設への被害は限定的で、震災後2日目には20~25%の稼働率ではあるが、生産が続いているという(2月8日付エコノミム)。

(中島敏博)

(トルコ)

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