貿易収支は3年ぶり赤字 、主力の銅輸出は額・量とも減少、炭酸リチウム輸出額は8.8倍に増加
(チリ)
サンティアゴ発
2023年03月01日
チリ中央銀行が2月23日に発表した資料によると、2022年の貿易(通関ベース)は、輸出(FOB)が前年比3.0%増の974億9,100万ドル、輸入(CIF)が13.2%増の1,044億700万ドルとなり、貿易収支は69億1,600万ドルの赤字になった。貿易収支が赤字となったのは2019年以来3年ぶりで、中銀が公表しているデータ(2003年まで)の中で、赤字がここまで拡大したのは初めてのこと。貿易収支の赤字には、国際価格の上昇に伴うディーゼル燃料や石炭などエネルギー輸入額の増加が最も寄与した。
輸出を品目別にみると、鉱産物は前年比5.3%減の555億3,000万ドルで、鉱産物輸出の約8割を占める銅は前年比17.6%減となった(添付資料表1参照)。要因としては、主要鉱山での採掘減や、前年比5.4%減の1ポンド当たり4.00ドルとなった年平均の国際銅価格などが挙げられる。チリ銅委員会(COCHILCO)は、2023年の国際銅価格の平均について1ポンド当たり3.85ドルとの予想を発表しているものの、世界的なインフレによるマクロ経済リスク、ロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスク、中国での新型コロナ・パンデミックによる潜在的リスクが今後の銅価格に変動をもたらす可能性を指摘している。
一方で、炭酸リチウムの輸出は前年比8.8倍となる77億6,300万ドルになった。世界的な電気自動車の需要増に伴う価格急騰に伴い、中国や日本向けの輸出額が大幅に拡大した。
農林水産物は、前年比1.5%増の67億3,800万ドルで、サクランボやブドウの輸出が増加した。工業品は、19.8%増の352億2,300万ドルで、サーモンや鶏肉の輸出が2桁増となった。サーモンは、ポストパンデミックにより需要が回復したため、前年比で28.1%増となった。一方、ボトルワインは主な輸出先の中国(シェア:14.7%)、米国(8.7%)、英国(8.3%)向けが減少し、前年比2.6%減となった。
輸入を品目別にみると、中間財は、前年比22.1%増の560億1,200万ドルで、米国やブラジルからのディーゼルや石炭などのエネルギー製品の輸入が増加した(添付資料表2参照)。
消費財は、前年比3.0%増の286億200万ドルで、自動車や衣類、履物の輸入増が消費財全体の増加に寄与した。自動車は輸入額の増加に関連して、2022年の国内新車販売台数が過去最高を記録している(2023年1月17日記事参照)。一方で、携帯電話、テレビ、家電などは新型コロナ禍における「特需」が過ぎ去り、前年比で軒並み輸入金額が減少している。
輸出入を主要国別にみると、チリの第1位の輸出先は中国で、輸出全体の4割を占めている(添付資料表3参照)。中国への主な輸出品は銅関連製品、炭酸リチウム、サクランボなどで、チリの銅輸出全体の56.4%が中国向けだった。第1位の輸入元も中国(シェア:25.3%)で、続いて米国(20.9%)、ブラジル(9.7%)の順だった。米国やブラジルからはエネルギー製品や自動車が主な輸入品だった。
(岡戸美澪)
(チリ)
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