国産ブランドに置き換わる中、コカ・コーラに一定の人気

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2023年03月24日

ロシア国内のコーラ風味飲料の市場で、ロシア市場からすでに撤退済みにもかかわらず、コカ・コーラが一定の存在感を保っている。POSデータを基にした統計サイト「プロダジ.RF」とIT企業エボトルのデータによれば、国内小売り最大手のX5グループとマグニトを除く全国2万7,000店の小売りチェーン店や個人商店における2023年1~2月のコーラの販売量をブランド別にみた場合、首位の地場ブランド「ドーブリー(注)」(シェア33.8%)に続き、コカ・コーラが14.1%を占め2位となった(「RBK」3月16日)。

コカ・コーラはロシアによるウクライナ侵攻を受けて、2022年3月にロシア国内事業を停止。同年8月にはロシア法人の社名をコカ・コーラHBCからムルトン・パートナーズに変更したうえで、今後はコカ・コーラブランドの製品は取り扱わない方針を発表している(2023年1月20日付地域・分析レポート参照)。ロシア国内でボトリングされるコカ・コーラはすでに店頭からは姿を消している。代わりに、中央アジアやコーカサス地域など国外で生産される商品がロシアに持ち込まれるようになり、存在感の維持に一役買っている。

地場の高級スーパーマーケット・チェーン「アズブカ・フクーサ」はコカ・コーラが国内生産を停止して以降、デンマークやトルコ、ポーランド、イタリア、英国などで生産される商品の取り扱いを始めた。同社の代表は「われわれは他社のように、ロシアを去った輸入ブランドを国産の類似品に置き換えるという手法は取らずに、(コカ・コーラの)商品を復活させることに成功した」と語る(「RBK」3月16日)。ロシアのコーラ飲料市場で長年にわたりトップに君臨してきた、コカ・コーラの優位性は健在だ。

写真 市内のスーパーの店頭にはアゼルバイジャン産のコカ・コーラも並ぶ(ジェトロ撮影)

市内のスーパーの店頭にはアゼルバイジャン産のコカ・コーラも並ぶ(ジェトロ撮影)

徐々に国内ブランドへの置き換わりが進む

ただ、先述のデータによると、202212月のコカ・コーラのシェアは47.8%だった。わずか1年のうちに3分の1以下に縮小したことになる。代わりに、「ドーブリー」以外にも「チェルノゴロフカ」や「クール・コーラ」などの国産品が徐々にシェアを得ている。今後も、外国ブランドから国産品への置き換わりが進むものと予想される。

ロシアの総合シンクタンク(NAFI)のロシアの18歳以上の一般消費者1,600人に対するアンケート調査によると、「強力な国産ブランドの新たな出現と、外国ブランドの復帰のどちらをより望むか」と問いに対して、過半数となる54%が「国産ブランド」と回答した(同社発表31日)。慣れ親しんだ欧米などのブランドがロシアに再び戻ってくることを願う人もいる一方で、現実的な問題として、国産ブランドに期待せざるを得ない状況がある。

写真 何種類もの国内ブランド品が並ぶスーパーマーケットのコーラ売り場(ジェトロ撮影)

何種類もの国内ブランド品が並ぶスーパーマーケットのコーラ売り場(ジェトロ撮影)

(注)国内の旧コカ・コーラ工場で、2022年秋から製造・販売が開始された新商品。「ドーブリー」はロシア語で「良い」の意味。

【欧州ロシアCIS課】

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