2月の米消費者物価、前年同月比6.0%上昇、コア指数5.5%上昇でともに鈍化、ともに市場予想と一致

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月15日

米国労働省が3月14日に発表した2月の消費者物価指数(CPI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比6.0%上昇で、前月の6.4%から減速し、民間予想と一致した(添付資料図参照)。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数も同5.5%上昇で、前月の5.6%から鈍化、これも民間予想と一致した。前月比ではCPIは0.4%上昇(前月0.5%上昇)、コア指数が0.5%上昇(前月0.4%上昇)、民間予想はともに0.4%だった。

品目別に前年同月比で見ると、ガソリンは2.0%低下(前月1.5%上昇)と、2カ月ぶりに低下したが、前月比では1.0%上昇で、2カ月連続の上昇となった。食料品は前年同月比9.5%上昇(前月10.1%上昇)と、伸びが6カ月連続で鈍化し、内訳では家庭用食品は大きく伸びが鈍化したが、外食は伸びが加速した。財は1.0%上昇(前月1.4%上昇)と、伸びは6カ月連続で鈍化、前月比では横ばい(0.0%)だった。うち中古車は前年同月比13.6%低下(前月11.6%低下)と、4カ月連続でマイナスだった。新車は5.8%上昇と前月(5.8%上昇)と同じだった。一方で、サービスは7.3%上昇(前月7.2%上昇)で伸びが加速し、物価全体の約3割のウエートを占める住居費が8.1%上昇(前月7.9%上昇)と、引き続き伸びが加速している。そのほか、輸送サービスも14.6%上昇と前月(14.6%上昇)と同じ伸びで、引き続き伸びが高い(添付資料表参照)。

CPIは8カ月連続で鈍化し、前年同月比、前月比ともにほぼ市場予想と一致しており、結果的に前月のようなサプライズはなかった(2023年2月15日記事参照)。ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は、データ次第で政策金利の利上げペースを今後速める準備があるとして、金利引き上げ幅を再び拡大する可能性を示唆している。堅調だった2月の雇用統計の結果や(2023年3月13日記事参照)、市場予想どおりの今回のCPIの結果だけでみると、金利引き上げ幅再拡大のサポート材料になり得る。

しかし、シリコンバレー銀行などの経営破綻(2023年3月13日記事3月14日記事参照)から波及している金融システムの信用不安がかく乱要因となっており、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)によると、現時点で次回の政策金利引き上げ幅の市場予想は前回と同じ0.25ポイントが約4分の3を占め、0.5ポイント引き上げ予想は皆無、引き上げなしの予想も約4分の1を占めている。インフレ抑制という観点からは積極的な金利引き上げに傾くが、金融システムに信用不安が生じている現在、積極的な金利引き上げは不安を増幅し、新たな危機を触発しかねないリスクもはらむ。インフレ抑制と金融システムの安定という背反する命題の中で、FRBは今後の金融引き締めについて難しい判断を求められそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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