オユトルゴイの地下の銅鉱山採掘を開始

(モンゴル)

北京発

2023年03月22日

モンゴル・オユトルゴイ鉱山(OT)は313日、銅の地下鉱山(注1)の採掘を開始した。モンゴル政府と英国・オーストラリア資源最大手のリオティントは20221月、OTについて協力関係を新たなレベルに引き上げ、2023年上半期のOT地下鉱山採掘開始に合意していた。採掘開始の式典では、モンゴル政府を代表してロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相、リオを代表してヤコブ・スタウスホルム最高経営責任者(CEO)がそれぞれ祝辞を述べた。

オヨーンエルデネ首相は祝辞で「OTプロジェクトは、モンゴルが民主制に移行後、最大の外国投資案件であるだけではなく、モンゴルが第三の隣国(2)と初めて単独で実施する、経済的な自立と国家の独立を確保する上で重要な役割を果たす歴史的プロジェクトだ。OTの協定は、モンゴルが投資家と率直かつ透明性をもって互恵的な協力を実現でき、安定感があり、信頼できるパートナーであることを証明する事例となった」と述べた。

スタウスホルムCEOは「地下鉱山の採掘を開始し、OTは世界で最も重要な銅生産者の1つになる一歩を踏み出した。OTがフル稼働すれば、年間600万台以上の電気自動車の生産に十分な銅を供給できる。リオがOTの直接投資者になることで(注3)、OTの真の価値を創造し、これからもモンゴルの発展に貢献し続けるだろう」と述べた。

OTの地下鉱山開発には70億ドル以上の投資が行われている(注4)。地下鉱山がフル稼働すれば、生産量で世界4位の銅山となり、モンゴルは国際市場で主要プレイヤーの1つとなるとみられている。OTの露天掘りと坑内掘りは20282036年にフル稼働する予定で、年間50万トンの銅を採掘する計画だ。これにより、モンゴル経済・国家予算への歳入が少なくとも3倍に増加する見込み。現在、OTには2万人が働いており、そのうち97%はモンゴル人だ。

(注1)これまでOTの採掘は露天掘りで行ってきたが、OT鉱床の全埋蔵量の80%以上は地下にあり、含有率が最も高い部分は地下数百メートルに分布している。地下鉱山の鉱石の平均銅含有率は1.66%で、銅と金の含有量で世界最大とみられている。地下鉱山の採掘は、安全な先進技術の「ブロックケービング法」を採用し、ヒューゴ・ダメット北鉱区の地下1,300メートルの深さに長さ203キロのトンネルを建設し、破砕した鉱石は総延長13.2キロのベルトコンベアで地上まで回収される。

(注2)モンゴルはロシアと中国に国境を囲まれており、物理的には接していないが、外交政策上、日本や欧米などの国を「第三の隣国」と位置づけ、ロシア、中国と同様に重視している。

(注3)リオは20221216日、OTの株式66%を保有するターコイズヒルリソーシズを完全子会社化。これにより、リオはOTプロジェクトへの長期的コミットメントを引き上げるとしている。

(注4)過去に地下鉱山開発のコスト超過(2019815日記事参照)とモンゴル側の債務負担が問題になった(20191213日記事参照)が、2022125日にモンゴル政府とリオ側は、モンゴル側34%に対する負担総額24億ドルの負債を免除、2015年の地下鉱山開発と資金調達計画(通称:ドバイ契約)の取り消し、OTの坑内堀り事業への第三者の監査の容認、地下鉱山開発に係る2023年上半期までの超過費用をリオ側が全額負担し、モンゴル側に追加負債を生じさせない、電力需要の国内調達について合意した。

(藤井一範)

(モンゴル)

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