選挙制度改革の適用を最高裁判断で一時差し止め、訴訟は継続

(メキシコ)

メキシコ発

2023年03月29日

メキシコの国家選挙機構(INE)は3月27日、総会を開催し、最高裁の3月24日付判断に基づき、政府が3月2日付官報で公布した一連の法改正による選挙制度改革(プランB、2023年3月7日記事参照)の適用を停止した(INEプレスリリース3月28日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

INEはプランB公布後、プランBが国民の自由で真正な、秘密裏の投票を行う権利を阻害するとともに、INEで働く多くの労働者の解雇につながり、憲法が保障する人権を侵害するとして、憲法訴訟を最高裁に提訴しており、その提訴が最高裁で正式に受理され、適用が差し止められたかたちとなる。最高裁は適用差し止めを行った理由について、一連の法改正が一般的規範にとどまらず、事務局長や専門職員の解雇などといった具体的行為を定めており、法律が人権を修復不可能なかたちで侵害する場合は、過去の憲法訴訟でも適用差し止めが認められており、今回の事例も市民の政治・選挙権を侵害する可能性があるためだとした(最高裁プレスリリース3月24日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同差し止め判断により、最高裁がプランBの合憲性についての最終判断を出すまでの間、法改正の全ての条項の適用が停止され、プランBが定めるINEの機構改革に向けた専門家委員会の作業計画やスケジュールも停止される。エドムンド・ハコボ・モリナ事務総長をはじめとするINEで働く全てのスタッフの労働権も保護され、INEの地方の組織・機構も従来どおり機能し、市民の選挙権を保障し、適切な対応を行うとINEは指摘している。

大統領府は最高裁の判断に強い不満の意を表し、憲法第105条I項と同条第I項、第II項規制法の第19条II項に基づき、最高裁には選挙制度に関する憲法訴訟を審理する権限がないとし、法改正の適用差し止めといった予防措置は、問題が顕在している、あるいは差し迫った行為に対して与えられるべきで、将来の不確実な行為について与えられるべきではないと主張している。

INEの新任理事選出に与党の意向を強く反映

プランBの憲法訴訟と並行し、ロレンソ・コルドバ総裁を含め、4月3日に退任する理事4人の後任候補の選出が進められている。下院に設置された評価専門委員会で公募に応じた人物の評価が進められ、20人の最終候補者リストが3月24日に発表された。最終的には連邦下院の投票で出席議員の3分の2以上の賛成を得て4人の理事就任が承認される必要がある。

同リストの中には、総裁の後任候補としてルイサ・マリア・アルカルデ労働社会保障相の姉ベルタ・マリア・アルカルデ連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)衛生オペレーション担当理事が含まれるなど、現政権の閣僚や与党有力議員に近い人物が多くノミネートされている。野党などからは、それぞれの経験や能力ではなく、現政権や与党に近いことが影響しているという批判が上がっているが、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は「(経験よりも)誠実性や清廉性の方が重要だ」とし、国民の大半の支持を得ている現政権や与党に近い人物が多く含まれるのは当然で、問題視していない立場を明らかにした(大統領府3月27日記者会見録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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