米エネルギー情報局、2030年のCO2削減量は2005年比で約3割と予測、パリ協定目標には届かず

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月17日

米国エネルギー情報局は3月16日、2023年版年次エネルギー見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表し、その中で米国のエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量の削減量は、2030年までに2005年比で約3割にとどまると予測した。パリ協定で提出された米国の国別決定貢献量 (NDC) では、温室効果ガス(GHG)排出量を2030 年までに2005年比で50~52%削減する目標を掲げているが、CO2のみでもこれに届かない結果となった。

米国では、2022年8月に4,000億ドル弱の気候変動対策を盛り込んだインフレ削減法(IRA、2022年10月6日付地域・分析レポート参照)が成立している。今回の見通しでは、2022 年11月中旬までに採択された法律などを可能な限り反映した上で、IRAによる財政支援(税額控除)が最大限に発揮されたケース、標準ケース、最低限だったケースの3つを試算している。最大限のケースで2030年のCO2削減量は2005年比34%、標準ケースでは33%、最低限のケースでは27%だった。なお、IRAがなかった場合も試算しており、この場合の2030年の削減量は2005年比26%だった。また、米国は2030年目標と同じく、2050年のカーボンニュートラルを国際目標に掲げているが、2050年の削減量は最大限のケースで2005年比35%、標準ケースで34%、最低限ケース、IRAなしはともに28%だった。

見通しでは2050年までの燃料別の純発電量も試算しており、上記3ケースにおいて太陽光発電と風力発電のシェアが今後拡大し、2つ合わせた全体のシェアは2050年には41~59%まで伸びると試算している(2022年時点では約14%)。他方、天然ガス発電は2050年に20~32%のシェアを占め(2022年時点では約40%)、石炭火力発電も減少するもののどのケースでも2050年にシェアを残しており、バイデン政権が掲げる2035年の電力部門の脱炭素化は、現状で達成が難しい姿となっている。

今回の試算で、IRAはCO2削減に有効ではあるものの、公約の達成にはさらなる政策などが必要なことが明らかとなった。だが、財政支援を伴う追加の政策実施は、歳出拡大に否定的な共和党が下院で多数派政党となっている現状では、即座には難しい情勢だ。今後、着実にIRAを実施していく中で、バイデン政権がどのように次の気候変動対策を打ち出していくかに注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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