米小売企業、先行きに慎重な見通し示す企業が相次ぐ、インフレ下で裁量的支出が減少

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月02日

米国小売り大手のターゲットは2月28日、2022年度第4四半期(2022年11月~2023年1月期、注1)決算を発表した。総売上高は前年同期比1.3%増の314億ドルで、ウォールストリートの市場予想を10億ドル近く上回った(ブルームバーグ2月28日)。一方で、純利益は前年同期比43.3%減の8億7,600万ドルまで落ち込んだ。過剰在庫を削減するため、年末商戦期間中に玩具から電化製品まで幅広い分野で大幅な値引きを実施したことが全体の利益を圧迫した。

今回の発表について、同社のブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は決算発表時の電話会議で、消費行動が物品からサービスへと移行していることに加えて、インフレが高進するにつれて、消費者は裁量的な支出を控えて生活必需品に重点を置くようになった点を挙げ、「2022年がいかに不安定で不確実な年であったか鮮明になった」と述べた。同社では食品・飲料と美容製品の販売が全体の売上増を牽引しており、これらの部門の2022年度の売り上げは3年連続で2桁台の成長を達成しているとした。また、2023年度の既存店売上高は1桁台前半の減少から1桁台前半の増加になると予想している。1株当たり利益は7.75~8.75ドルになると見込んでいるが、これは市場予想(1株当たり9.23ドル)を下回っている(「CNBC」2月28日)。インフレ下で価格により敏感な消費者が増えていることから、今後は安価なプライベートブランドの商品展開を拡大し、2023年に10以上の自社ブランドを立ち上げる予定としている。

2023年度の見通しについては、景気の不透明感が強まっていることから、同業のウォルマートやホームデポも慎重な見通しを示している(2023年2月24日記事参照)。また、ホームセンターチェーン大手のロウズが3月1日に発表した第4四半期(2022年11月~2023年2月期)の決算では、純売上高が前年同期比5.2%増の224億4,500万ドルと伸びたものの、同四半期は例年と比べて1週間分追加の売り上げが含まれており、実質では前年同期からわずかの減少だったと分析されている(注2、「CNBC」3月1日)。2023年度の見通しについては、既存店の売上高が前年比で横ばいから2%の減少になると見込まれており、各社とも先行きについて慎重な見解を示している。

商業銀行グループサンタンデールのエコノミスト、スティーブン・スタンレー氏は「ウォルマートとターゲット(の決算発表)はともに第4四半期に予想を簡単に上回ったが、2023年については暗い見通しを示した」「誰もが最悪の事態に備えているが、雇用や個人消費などに関する1月のデータが示すように、今のところ、景気はよく持ちこたえている」と楽観的な見方を示しており、今後の消費傾向に引き続き注目が集まる。

(注1)ターゲットの各事業年度は、翌年の1月31日に最も近い土曜日が最終日となっている。このため、2023年度の最終日は2月3日となる。

(注2)ロウズの各事業年度は、翌年の1月31日に最も近い金曜日が最終日となっている。このため、2022年度は2022年1月28日から2023年2月3日と、営業週数が例年と比較して1週多い53週だった。

(樫葉さくら)

(米国)

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