米小売り各社が2022年第4四半期決算を発表、景気不透明感から先行きに慎重な見通し

(米国)

ニューヨーク発

2023年02月24日

米国小売り大手ウォルマートは221日、2022年第4四半期(202211月~20231月期)決算を発表し、純利益は前年同期比76.2%増の627,500万ドル、純売上高は7.4%増の1,6274,300万ドルで、いずれも大幅に上昇した。高インフレによる食品や必需品などの価格高騰により、消費者の間では節約志向の高まりで低価格商品を求める動きが広がっている。一方で、景気の不透明感が強まっていることから、2024年通期の見通しについては、国内のウォルマートの既存店売上高(燃料費除く)は2.02.5%増と見込み、アナリストの市場予想(3.0%増)を下回った。

今回の発表について、同社の最高財務責任者(CFO)を務めるジョン・レイニー氏は決算発表時の電話会議で、国内のウォルマートの既存店売上高は今四半期を通して好調で、202212月は主力の米国事業で過去最高の売上高を記録したと述べた。同氏によると、食料品の売上高が10%台後半で伸びるなど引き続き好調で、その半分近くは世帯年収が高所得層によるものだと述べた。また、物価高が続く中で消費者はより価格を重視する傾向がみられており、同社では20223月以降、定番のナショナルブランドよりもプライベートブランド(PB)に引き寄せられる消費者が増えているとした。この傾向は引き続き顕著で、第4四半期にはPB商品への支出がより一層強まったという。

こうした消費傾向は業界全体でも広がっており、プライベートブランド製造業者協会(PLMA)によると、米国の全小売店におけるPB商品の2022年の売上高は前年比11%増の2,290億ドルに達したとした。PLMAのペギー・デイビス会長は「米国の消費者は、PB商品を選択してより賢く買い物をすることで、インフレや景気後退への懸念、サプライチェーンの問題、地政学的不安に直面している中で、家族のために、高品質で価値の高い食品や非食品の雑貨を購入することができた」と述べた上で、2023年もPB市場の長期的な成長が見込めるとの見方を示した(「フード・ビジネス・ニュース」221日)。

また、同日にホームセンター最大手ホームデポが発表した2022年第4四半期(202211月~20231月期)決算では、純売上高が前年同期比0.3%増の3583,100万ドルと、ウォールストリートの市場予想(3597,000万ドル)を下回った。市場予想を下回ったのは、新型コロナウイルス禍前の201911月以来で、ホームデポの同日の株価も7%以上下落した。同社はまた、個人消費の減速を踏まえて、2024年通期の見通しについては、売上高がほぼ横ばいになると予想している。ホームデポの執行副社長兼CFOのリチャード・マクフェール氏は、2023年の実質経済成長率と個人消費は横ばいになると想定していることに加えて、消費行動が物品からサービスへと移行していることから、ホームセンター市場は1桁前半の減少になると見込んでいる。また、同社は時間給労働者の賃金引き上げに総額10億ドルを投じると発表しており、これらのコスト積み上げが利益を圧迫するとしている。

景気の先行きを巡って不透明感が高まる中、両社とも慎重な見通しを示しており、今後はターゲットやメイシーズなどの業績発表が注目される。直近1月の米小売売上高は前月比3.0%増と、自動車やフードサービスなど幅広い業種で販売は好調だったが(2023年2月16日記事参照)、個人消費の堅調さがどの程度保たれるか関心が寄せられている。

(樫葉さくら)

(米国)

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