米国際貿易委員会、対中追加関税の経済的影響を調査へ

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年05月09日

米国国際貿易委員会(ITC)は5月5日、1962年通商拡大法232条および1974年通商法301条に基づく追加関税措置の経済的影響に関する調査を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。連邦議会上下両院の歳出委員会は、3月15日に成立した2022会計年度予算の歳出法(H.R.2241)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに付した合同説明文書(Joint Explanatory Statement)で、同調査の実施をITCに指示していた。

ITCは、追加関税(注1)が米国の貿易、生産、物価に与えた影響を分析する。調査対象は関税の影響を最も直接的に受けた産業とする。ITCは調査の一環として、7月21日に公聴会を開催するほか、8月24日まで利害関係者から書面での意見募集を行う(注2)。ITCは2023年3月15日までに議会に報告書を提出する予定だ。

301条に基づく対中追加関税については、バイデン政権や議会でも評価が分かれている。ジャネット・イエレン財務長官らは、インフレ対策として追加関税の見直しに前向きな発言をしている(2022年4月26日記事参照)。上院は5月4日、両院合同委員会で今後一本化作業が行われる対中競争法案(2022年4月11日記事参照)について、最終的な法案に対中追加関税の適用除外手続きを再開する条項を含めるよう上院の合同委メンバーに指示する動議を53票対43票で可決した。この動議は、追加関税の米製造業などへの悪影響を懸念したパット・トゥーミー上院議員(共和党、ペンシルベニア州)が提起した。

一方、米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は5月2日、米シンクタンクのミルケン協会のイベント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに出席した際、インフレなどの短期的な課題に対処する時は「(対中関係などを踏まえた)中期的な戦略を損なわないようにすべき」と指摘するなど、追加関税の安易な撤廃には慎重だ。USTRは5月3日に対中追加関税の見直し手続きを開始すると発表しており、国内産業から継続要望が出た場合には、USTRも追加関税の米国経済への影響を検討する見込みだ(2022年5月6日記事参照)。

(注1)調査対象は2022年3月15日時点で有効だった追加関税。

(注2)公聴会での証言または公聴会の視聴を希望する場合、ITCウェブページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに今後掲載される案内に従い7月6日午後5時15分までに手続きする必要がある。書面での意見提出はITCの専用システム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから行う。その他の詳細は、ITCの調査に関する通知文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を参照。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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