バイデン米大統領はイランとサウジアラビアの国交再開を歓迎と述べるも、米国内では中国の介入に警戒感

(米国、イラン、サウジアラビア、中国、イスラエル)

ニューヨーク発

2023年03月14日

米国のジョー・バイデン大統領は3月10日、イランとサウジアラビアの中国の仲介による7年ぶりの外交関係正常化合意(2023年3月13日記事参照)について、「イスラエルとアラブ近隣諸国の関係が良好であればあるほど、全ての人にとって良くなる」と記者への質問に答えるかたちで述べた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。ホワイトハウスのカリーン・ジャンピエール大統領報道官はその後のブリーフィングで、バイデン大統領の発言の解説として、「中東における摩擦の緩和は優先事項であり、バイデン大統領はそれを歓迎している」と説明した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ただし、政権からの声明とは反対に、米国の有識者からは、中国によってイランとサウジアラビアの関係正常化がもたらされたことに対する、米国の外交上の影響力低下を懸念する声が複数聞かれる。

米国シンクタンクのアトランティック・カウンシルのスコウクロフト中東安全保障イニシアチブディレクターのジョナサン・パニコフ氏は同日、中国の中東における「政治的役割の出現を目の当たりにしている」とし、これが「米国の政策立案者に対する警告になる」との論考を発表した。また、中国が中東を支配すれば、米国の商業、エネルギー、国家安全保障が根本的に脅かされることになるとした。同シンクタンクのシニアフェローのカースティン・フォンテンローズ氏は、この合意による勝者は中国だとし、両国に対して互いに対抗するための道具を売ってきた国が、平和主義者として勝利したと指摘した。

また、米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長兼中東プログラムディレクターのジョン・オルタマン氏によると、中国の介入によって交渉が円滑に進んだようにみられることは中国の権威を高めることにつながるとした。また、米国が湾岸地域で圧倒的な軍事力を持つ一方で、中国が外交力を高め、強力な存在となりつつあるということは、中国の世界における力と影響力を高め、米国のグローバルプレゼンスが縮小しているという見方に拍車をかけることになると述べた。

こうした声に対し、米国務省のネッド・プライス報道官は3月13日のブリーフィングにおいて、「今回の合意は中国がどうこうというよりも、イランとサウジアラビア間で約束されたということだ。(中東)地域におけるわが国の役割が(中国に)取って代わられたようかのように報道されているのを読んだが、それがどのように可能か想像がつかない。わが国以上に安定・統合された(中東)地域の構築に貢献している国はない」と述べた。

なお、アトランティック・カウンシルのパニコフ・ディレクターは、今回の2国間の合意は、米国とイスラエルがイランの核開発計画に対する対応策について密接に連携している最中に発表されたとし、米国は2国間の摩擦緩和は歓迎するかもしれないが、イスラエルとしてはイランに対する軍事行為の脅威を弱めるためのものだと解釈し、歓迎しないだろうとも述べた。

(吉田奈津絵)

(米国、イラン、サウジアラビア、中国、イスラエル)

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