中銀、インフレ抑制へ政策金利を一気に3ポイント引き上げ20%に

(パキスタン)

カラチ発

2023年03月07日

パキスタン中央銀行(SBP)は3月2日、臨時の金融政策委員会(MPC)を開き、政策金利を一気に3ポイント引き上げ、17%から20%とした。市場関係者は2ポイント引き上げを予想していた中、インフレ沈静化を狙い、大幅な引き上げとなった。政策金利が20%を記録したのは1996年10月以来26年ぶり(「ビジネスレコーダー」紙3月3日)という。2月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比31.5%と、統計開始(1965年7月)以降で最高を記録(「ドーン」紙3月2日)する中での大幅な利上げだ。

SBPはMPC後の声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で「最近の財政調整(増税などの措置)と外国為替下落により、直近のインフレ見通しが悪化した。2023年の平均インフレ率は、前年11月時点の21~23%の見通しから、27~29%のレンジになると予想される」と述べた。なお、通貨パキスタン・ルピーは同日、銀行間取引レートが過去最安の1ドル=285.09ルピーへ、6.6%(約19ルピー)急落した(「ドーン」紙3月3日)。

政府はIMFとの総額70億ドルに上る拡大信用供与措置(EFF)第9次レビューの事務レベル合意を急いでいる。IMFの要求の1つの財政赤字削減を達成するため、2月20日には一般売上税(GST)引き上げ(17%→18%)、高額携帯電話などを含むぜいたく品にかかるGSTの引き上げ(17%→25%)、連邦物品税(FED)の引き上げ(清涼飲料水13%→20%など)、たばこ税引き上げなどを含む総額1,700億ルピー(約833億円、1ルピー=約0.49円)に上る増税法案を議会で可決した(「ドーン」紙など2月20日)。それ以外にも、ガソリンやガス料金の値上げが実施され、電気料金値上げも予定されている。シャバズ・シャリフ首相は、閣僚や閣僚アドバイザーなどの待遇について、給与と手当の自主返納、高級公用車の返還、エコノミークラスでの出張などの倹約令を出すことで国民に理解を求めた。

イスハク・ダール財務相は3月2日、「来週にもIMFとの事務レベル合意がなされるだろう」と語るなど、デフォルト(債務不履行)不安の沈静化に努めている。

SBPは2月24日に中国国家開発銀行から7億ドルの融資を受けたため、外貨準備は32億5,800万ドル(2月17日)から38億1,400万ドル(2月24日)へ5億5,600万ドルの増加となった。とはいえ、外貨は逼迫しており、日系企業は依然として輸入困難に直面している(2023年2月21日付地域・分析レポート参照)。

(山口和紀)

(パキスタン)

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