習国家主席がイラン大統領と会談、核問題などについて共同声明を発表

(中国、イラン)

北京発

2023年03月02日

中国の習近平国家主席は214日、北京市でイランのイブラーヒーム・ライーシー大統領と会談した(注)。両者の会談は、20229月の第22回上海協力機構(SCO)首脳会議以来(2022年9月22日記事参照)となる。

習国家主席は「イランが主権独立、領土の完全性、民族の尊厳を守ることを支持する」とし、核心的利益に関する相互支援と、貿易、農業、工業、インフラについての協力を深めることを希望し、さらに多くのイランの農産品を輸入するとした。

また、中国は、イラン核合意(包括的共同作業計画)履行の交渉再開に建設的関与をし、イランの合法的で正当な権益の維持を支援するとした。

216日には、外交部ウェブサイトで両国の共同声明が公表された。共同声明では、(1)政治、(2)安全保障・防衛、(3)経済・発展協力、(4)教育・文化協力、(5)国際・地域問題についての協力が盛り込まれている。

政治面では、それぞれが領土・主権の完全性と民族の尊厳を守ることを支持し、中国は外部勢力がイランの内政に干渉し、安全と安定を破壊することに強く反対するとした。また、イランは「一つの中国」政策を継続するとした。

安全保障面では、あらゆるテロリズムに反対すると同時に、反テロ活動におけるダブルスタンダードやテロを特定の民族や宗教と結びつけることに反対するとした。両国の国防部門の戦略コミュニケーション強化に同意し、2023年中に北京市で公安・内政・安全連合ワーキンググループの第4回会議を開催するとした。

経済面では、習国家主席が会見で言及した内容に加え、中国がイランで優れた製品の生産にかかわり、対中輸出の増加に貢献するとした。

国際面では、イラン核合意は、イランの核利用の平和的性質を確保することに役立ったとした。その上で、現在の状況は米国が離脱したことが根源と非難し、イランへの制裁解除を呼び掛けた。また、イスラエルに対する「核兵器不拡散条約」の加入呼びかけと、その所有する核施設が国際原子力機関(IAEA)の監督下に置かれることの重要性を確認した。

上海外国語大学中東研究所の範鴻達教授は、今回のライーシー大統領訪中の大きな目的は、中国とイランの25カ年の包括協定(2021年3月29日記事参照)と戦略的協力の実施推進だとし、「包括協定は新型コロナウイルスの影響もあり、実施が十分とは言えない状況にある」としている(「中国青年報」216日)。

(注)イラン側の反応は2023年2月17日記事参照

(河野円洋)

(中国、イラン)

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