住友商事、リヤドの金融特区と温暖化抑制に向けた覚書を締結

(サウジアラビア、日本)

リヤド発

2023年02月06日

住友商事は1月31日、サウジアラビア・リヤドのアブドゥッラー国王金融地区(KAFD)と、同地区のヒートアイランド現象(注1)抑制に資する遮熱性舗装に関する覚書を締結した。環境に配慮した遮熱性の高い特殊な舗装剤を活用し、太陽光の赤外線を反射させることで、路面温度の上昇を抑制する。今後数カ所で試験施工を進めた上で、本格的な導入を検討していく。

本覚書は、2022年12月26日にリヤドで開催された「日・サウジ・ビジョン2030ビジネスフォーラム」(2022年12月28日記事参照)において発表され、今回正式な調印式を実施した。調印式には、住友商事の森肇中東・アフリカ総支配人やKAFDのゴータム・サシッタルCEO(最高経営責任者)らに加え、KAFDを100%保有するサウジアラビア公的投資基金(PIF)、中東協力センター、ジェトロ・リヤド事務所の関係者が出席した。

写真 KAFDのサシッタルCEO(左)と住友商事の森中東・アフリカ総支配人(右)(ジェトロ撮影)

KAFDのサシッタルCEO(左)と住友商事の森中東・アフリカ総支配人(右)(ジェトロ撮影)

サウジアラビア政府は、「サウジ・ビジョン2030」や2060年までのカーボンニュートラル達成(2021年10月25日記事参照)に向けて、脱炭素・省エネに取り組んでおり、最新技術の導入に積極的だ。また、政府は国民の生活習慣病改善に向けて日常的な運動を推奨しているが、1年を通して日差しが強く気温が高くなりやすいサウジアラビアでは、屋外でのウォーキングなどが難しい面もあった。今回この技術を導入することで、双方の目的達成につながることが期待される。

KAFDは、スマートシティの開発とエネルギー効率の高いビルの実現を掲げており、既に廃棄物処理システムや水のリサイクル、地域冷房(注2)の冷却プラントを導入しているが、サシッタルCEOは「今回の舗装剤導入により、地区内の温度を下げることで、テナントや居住者、従業員の生活と労働環境の向上にもつながる」と期待を述べた。

住友商事は、本舗装剤に関する技術を保有するNIPPOと共に中東地域で試験施工を実施しており、サウジアラビアでは巡礼地であるメッカで既に試験的に導入している。本舗装剤は路面のみならず、屋根や壁に塗装することで室内の気温を下げる効果もあり、今後、住宅の建設が加速するリヤドにおいて、さらなるビジネスチャンスが期待される。

(注1)都市の気温が周囲よりも高くなる現象。構造物や舗装が太陽の熱を吸収し周囲に放出することで発生する。熱中症などの健康への被害や、感染症を媒介する蚊の越冬といった生態系の変化が懸念される。

(注2)1カ所、または数カ所の熱供給設備で冷水を製造し、地域導管から一定地域内の建物群に供給し、冷房を行うシステム。

(位田陸)

(サウジアラビア、日本)

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