EUの冷暖房に占める2021年の再エネ比率は22.9%、前年からわずかに後退

(EU)

ブリュッセル発

2023年02月10日

欧州統計局(ユーロスタット)は2月3日、2021年のEU全体と各加盟国の冷暖房に占める再生可能エネルギー(以下、再エネ)比率を公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EU全体では22.9%となり、前年の23.0%から0.1ポイント低下した(添付資料図参照)。ユーロスタットによれば、2021年は新型コロナウイルス関連規制の解除に伴う経済回復でエネルギー消費が増加し、最終エネルギー消費に占める再エネ比率(2023年1月27日記事参照)と同じく、冷暖房に占める再エネ比率も、一時的とみられるものの、前年比でやや減少した。一方で、2021年の数値は、統計の入手可能な2004年(11.7%)のほぼ2倍となっており、バイオマスとヒートポンプを中心とした再エネの利用は増加してきた。長期的には引き続きヒートポンプなどによる冷暖房の電化が進み、再エネ利用の拡大が見込まれる。

加盟国間でばらつき、北欧やバルト諸国で高い再エネ比率

国別では、加盟国の間でばらつきが目立った。特にスウェーデンの68.6%が突出しており、冷暖房用エネルギーの3分の2以上がバイオマスやヒートポンプなどの再エネで賄われている。次いで、エストニアの61.3%、ラトビアの57.4%、フィンランドの52.6%が続いた。一方で、冷暖房用エネルギーの再エネ比率が最も低かった加盟国は、アイルランドの5.2%で、オランダ(7.7%)、ベルギー(9.2%)が続いた。西欧主要国では、フランスの24.2%以外、イタリア(19.7%)、スペイン(17.4%)、ドイツ(15.4%)は、軒並みEU平均以下の結果となった。

前年比で冷暖房に占める再エネ比率が上昇した加盟国は、マルタ(前年比8.3ポイント増)、キプロス(4.2ポイント増)をはじめ16カ国に上った。一方で、前年比で再エネ比率が低下した加盟国は、ブルガリア(11.6ポイント減)、デンマーク(9.5ポイント減)などだった。

EUでは、2030年の温室効果ガス削減目標(1990年比で55%削減)の達成に向けて、建物の最低エネルギー性能基準の設定(2021年12月17日記事参照)や、建物の暖房設備での化石燃料の使用を制限するなどの政策を進めている(注)。

(注)調査レポート「『欧州グリーン・ディール』の最新動向」を参照。

(大中登紀子)

(EU)

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