インフレ削減法に基づくEV税額控除の対象車両拡大、米財務省が車両分類を更新

(米国)

ニューヨーク発

2023年02月06日

米国財務省は2月3日、インフレ削減法(IRA)で税額控除の対象となるクリーンビークル(注1)の上限価格を決定するために設けた車両分類に関し、新たな分類基準を採用すると発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した(通知番号:2023-16)。これにより、購入者が税額控除を受けられる対象車両の拡大が期待される。

IRAでは、1台当たり最大7,500ドルの税額控除の対象となる車両の上限価格(注2)について、バン、スポーツ用多目的車(SUV)、ピックアップトラックは8万ドル、乗用車を含むそのほかの車両は5万5,000ドルと定めている。財務省は車種の定義に関し、「2023年1月1日から施行が開始された要件の定義に関する通知(2023-1)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(2023年1月5日記事参照)の中で、連邦規則集(CFR)第40章600.002条の分類を採用すると発表。しかし、同規則は車体や車両内部の形状を基準としており、ゼネラルモーターズ(GM)「リリック」、フォード「マスタング・マッハE」、テスラ「モデルY」など、一部の小型SUVが上限価格の低い乗用車に分類され、税額控除の対象から外れていた。これに関し、各メーカーから分類基準の見直しを求める声が上がっていた。

財務省は新たな基準として、SUVを一括して同一区分とするCFR40章600.315-08条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの分類を採用することにした。財務省は「この変更により、同様の特徴を持つクロスオーバー車両を一貫して扱われるようになる」と述べており、税額控除の対象車両の拡大が見込まれる。今回採用した分類は既に温室効果ガス(GHG)の排出基準を算出する際に用いられており、これを管轄する環境保護庁(EPA)がモデルごとに車種を公表している。そのため、財務省は購入者にとっても利便性が高いとみている。今回更新した分類に基づく税額控除は、1月1日以降に購入された車両にさかのぼって適用される。主要自動車メーカーを代表する米国自動車イノベーション協会のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「EV税額控除の混乱を解消し、今日(そして明日)電動クロスオーバーまたはSUVを購入する顧客を即座に支援する非常に良い決定だ」として、今回の更新を歓迎している(オートモーティブニュース2月3日)

(注1)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(注2)メーカー希望小売価格。メーカーが提案する基本小売価格に、配送時に取り付けられた各アクセサリまたはオプション機器の小売価格を加えたもの。

(大原典子)

(米国)

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