労働協約適法化プロセス、自動車関連企業の半数以上が未完了

(メキシコ)

メキシコ発

2023年02月02日

米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の署名に伴って改正されたメキシコ連邦労働法に基づき、同国内の企業は既存の労働協約の適法化プロセス(注1)を実施することが求められている。その完了期限が5月1日に迫っている(2019年8月5日記事参照)。適法化期限まで残り90日を切った時点で、在メキシコの自動車関連企業の半数以上がこのプロセスを完了していない状況の中、関係団体が早期の手続き実施を呼びかけている。

メキシコの自動車関連産業には適法化されるべき労働協約が2,000件ほど存在するが、そのうち同プロセスを完了しているのは1月末時点で841件と半数に満たない。同適法化プロセスの促進を支援する汎(はん)アメリカ開発基金(PADF)とメキシコ自動車部品工業会(INA)が1月30日に開いた記者会見で、INAのフランシスコ・ゴンサレス会長が明らかにした。

PADFの労働改革実行プロジェクトディレクターのフェルナンド・トリス氏によると、自動車関連産業以外の分野を含むメキシコ全体の該当件数は約14万件に上るが、そのうち適法化が完了しているのはわずか8.6%の約1万2,000件だ(注2)。

この適法化プロセスの必要性を理解していない企業が多い状況を受け、PADFでは2022年から約1,000社に情報提供を実施しているほか、自動車関連企業の人事担当者向けには独自のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを作成し、適法化に向けた手続きに関するオンラインレッスンが受講できるようにしている。

期限内に労働協約が見直されない場合、現行の労働協約が無効となり、外部の過激な組合が干渉することによって大幅な賃上げや待遇改善などの要求が発生し、これまで穏健な組合と「保護協約」を締結していた企業にとっては雇用コストの大幅増につながったり、労働環境の動揺を引き起こしたりすることも予想される(「エル・フィナンシエロ」紙2月1日)。

北米自動車産業の深化により、関連業界団体への加盟企業数20%増を見込む

同じ記者会見でINAのゴンサレス会長は、生産拠点を消費地の近隣諸国に移転するニアショアリングの流れや、USMCAの発効、電気自動車(EV)製造拠点の新設や追加投資、米国・カナダ・メキシコの間で合意した半導体のサプライチェーン強化など、さまざまな外部要因により、メキシコ国内の自動車クラスターやINAの加盟企業数は約20%の成長を見込んでいることを明らかにした。

(注1)2019年5月改正の連邦労働法には、USMCAの関連規定(付属書23-A)の内容が盛り込まれており、改正政令の付則第11条は、改正施行日(2019年5月2日)から4年以内に少なくとも1度は、既存の全ての労働協約について、労働者の声を反映した内容に見直すことを義務付けている(2019年5月7日記事参照)。

(注2)連邦調停労働登録センター(CFCRL)によると、1月末時点で同センターが適法化されたと認める労働協約は1万2,641件、登録組合は3,628団体、適法化のために開催された投票などイベント回数は2万3,845回、適法化の投票に参加した労働者数は248万1,568人となっている。

(渡邊千尋)

(メキシコ)

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