欧州自動車・燃料団体、大型車のCO2排出基準規則改正案に懸念表明

(EU)

ブリュッセル発

2023年02月16日

欧州自動車工業会(ACEA)は214日、欧州委員会が同日発表した大型車の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案(2023年2月16日記事参照)について声明を発表した(ACEAのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。新車からのCO2排出量を「2030年に2019年比で45%削減」するとは、「2030年時点で40万台以上のゼロエミッション車のトラックが走行し、1年当たり少なくとも10万台が新車登録されるということだ」と指摘。そのためには「今後7年間で、トラック用の公設充電ポイントを5万基以上、水素ステーションを700カ所以上設置する必要がある」と述べ、自動車業界だけでなく、EU加盟国やあらゆる関係者が充電・充填(じゅうてん)インフラ整備に力を入れる必要があると強調した。さらに、運送事業者のゼロエミッション車の調達を促すために、車両の開発や購入に係るインセンティブの強化やカーボンプライシングの枠組みも必要だと指摘した。

また、2030年以降、都市の路線バスの新車を全てゼロエミッション車とするという提案は、公共交通事業者に対して投資計画の見直しや車庫への充電・充填インフラ整備など、非常に大きなプレッシャーをかけるものだと警告した。事業者の内燃機関搭載車への駆け込み需要による2030年直前の市場の混乱にも懸念を示した。

さらに、欧州委は次期排ガス規制案「Euro7(ユーロ7)」(2022年11月11日記事参照)では、自動車業界に対して、内燃機関搭載車についてさらなる規制への対応を迫りながら、今回の改正案ではゼロセミッション車への移行を重視していることから、自動車業界が気候目標達成に向けて必要な投資を行えるように、政策の一貫性が必要だとした。

欧州自動車部品工業会(CLEPA)も同日付声明で、提案された新たな排出基準は「野心的すぎる」と難色を示し、特に2030年については、現行規則で設定する基準を維持し、今回提案された「2035年に2019年比で65%削減」へ向けて「合理的な道筋」を検討すべきだとした(CLEPAのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、車両のライフサイクル全体での排出量が考慮されていない点に不満を示した。一方、欧州委が2028年に規則の効果や影響の評価を行うとしたことを歓迎し、目標達成に向けた環境整備や手頃な価格の再生可能エネルギーの利用の可能性の評価につながるとした。

合成燃料(e-fuel)の生産を推進する企業や団体などが参加するイーフューエル・アライアンス(eFuel Alliance)は同日付声明で、再生可能燃料が改正案で考慮されなかったことに失望を示した(eFuel AllianceのプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。合成燃料は車体などを改修することなく、徐々に従来の燃料と混合して使用できるようになっており、生産コストや販売価格が下がれば、運送事業者にとって脱炭素へ向けた選択肢の1つになりうると主張。充電・充填インフラ整備やバッテリー用の原材料の確保といった課題もある中、再生可能燃料という選択肢をなくすことは技術中立性の原則や、運輸部門の強靭性および柔軟性を損なうものだと批判した。

(滝澤祥子)

(EU)

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