米ウイグル強制労働防止法に基づく輸入差し止め、施行3カ月で1,500件超に、太陽光製品に大きな影響

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年02月02日

米国税関・国境警備局(CBP)は1月30日、2022年の主な取り組みの実績を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2022会計年度(2021年10月~2022年9月)の貿易関連の執行データも公表し、強制労働によって生産されたとの疑いで輸入を差し止めた件数は3,605件(総額8億1,650万ドル相当)に上った。そのうち、新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA、2022年8月5日付地域・分析レポート参照)に基づく輸入差し止めは1,592件(総額約5億ドル相当)だった。UFLPAは年度後半の2022年6月に施行されたが、差し止め件数全体に占める割合は4割に達した。

CBPはUFLPAの詳細な執行状況を明らかにしていないが、特に太陽光発電製品が大きな影響を受けているもようだ。CBPの報道官によると、UFLPAに基づいて差し止めなどの対象となった輸入は2023年1月までに2,692件あり、その約半数が太陽光パネルまたはその関連部品だったという(「フォックス・ビジネス」1月26日)。太陽光パネルの原材料となるシリカ系製品は、UFLPAの執行戦略で優先執行対象分野に挙げられており、これまで米メディアも中国メーカーの太陽光発電製品の輸入差し止め事例を報じていた(2022年8月16日記事参照)。米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)と調査会社ウッドマッケンジーの2022年12月の報告によると、差し止められた太陽光発電製品の多くは保留されたままで、UFLPAに伴うサプライチェーンの制約などにより、2022年の米国の太陽光発電導入量は前年比23%減の18.6ギガワットにとどまる見通しだ。

一方、CBPはNGOなどから寄せられる情報に基づいて、UFLPAの執行範囲を広げている。CBPは1月5日付の記事外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、UFLPA施行後も新疆ウイグル自治区で生産または加工されたレッドデーツが米国で販売されていたとの「ウイグル人権プロジェクト(UHRP)」の報告(2022年9月15日記事参照)を受けて調査を行い、複数の港で新疆ウイグル自治区産とみられるレッドデーツの輸入を差し止めたと明らかにした。CBPは1月26日に実施したUFLPAなどに関するウェビナーでも、優先執行分野にレッドデーツやポリ塩化ビニル(PVC)を加えたと説明した。

CBPはUFLPAに関わる輸入手続きも拡充しており、3月には新疆ウイグル自治区で製造された可能性のある製品の輸入者に対する早期警告システムを導入する予定だ(2022年12月22日記事参照)。また、5月にはUFLPAの輸入例外申請の自動化システムを導入する計画で、輸入者は同システムを通じて関連書類の提出などができるようになる見込みだ。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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