米ウイグル強制労働防止法、太陽光発電製品の輸入差し止めか、メディア報道

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年08月16日

米国でウイグル強制労働防止法(UFLPA)(注)に基づく輸入禁止措置が621日に施行されてから2カ月がたとうとしている。同法は、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の米国への輸入を原則禁止している(2022年6月21日記事参照、注)。米国税関・国境警備局(CBP)は、既にUFLPAに基づいて複数貨物の輸入を差し止めたもようだ。

米国メディアによると、太陽光発電製品の差し止め事例が相次いでいる。「ウォールストリート・ジャーナル」紙(電子版89日)は業界幹部らの話として、いずれも中国の太陽光パネルメーカーのロンジ・グリーンエナジー・テクノロジー、ジンコソーラー、トリナ・ソーラーの3社の製品の輸入が差し止められた、と報じた。輸入差し止めを受け、ロンジ・グリーンエナジー・テクノロジーは、米国向けに太陽光パネルを製造するベトナムの工場の稼働を一時停止したという。太陽光発電製品の輸入差し止めについては、業界専門誌「pv magazine USA」(71日)も同様に報じており、CBPは米国の輸入者に対し、太陽光パネルの原料である珪岩(けいがん)の調達に関する情報を求めたもようだ。太陽光発電製品の供給者と米国の需要者の間では、UFLPAの下で貨物の輸入が差し止められたり、それにより納品が遅れたりした場合の対応コストをどちらが負担するかが課題となっているとされる(ブルームバーグ84日)。

米国政府の強制労働執行タスクフォース(FLETF)は、UFLPAの執行戦略で、同法を優先的に執行すべき分野の1つとして、太陽光パネルの原材料となるシリカ系製品を挙げている(2022年6月20日記事参照)。今回の差し止め事例からは、CBPUFLPAの執行戦略に沿ったかたちで法執行していることがうかがえる。他方、製品の差し止めが報じられた3社はいずれも、UFLPAの執行戦略で輸入禁止対象の事業体を指定した「UFLPAエンティティー・リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」には現時点で掲載されていない。一方で、連邦議会からは、新疆ウイグル自治区における強制労働への関与が疑われるジンコソーラーなどが、同リストに指定されていない理由を追及する動きも出ている(2022年7月14日記事参照)。

連邦議会はUFLPA成立後も、新疆ウイグル自治区における強制労働問題への対抗姿勢を強めている。上院外交委員会のボブ・メネンデス委員長(民主党、ニュージャージー州)とマルコ・ルビオ議員(共和党、フロリダ州)は82日、「奴隷労働支援者制裁法案(S.4714外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を提出。同法案は、ウイグル族らへの人権侵害を理由に制裁対象となっている外国の事業体とビジネスを行う、またはそれら事業体に支援を提供する者に二次制裁を科す内容となっている。

(注)ウイグル強制労働防止法の概要については、2022年8月5日付地域・分析レポート参照。また、同法に関する最新ニュース、法令・ガイダンスなどの情報については、ジェトロのウイグル強制労働防止法特集ページも参照。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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