輸入困難で日系自動車メーカーの生産停止相次ぐ

(パキスタン)

カラチ発

2023年02月08日

トヨタブランドの四輪車を製造販売する合弁会社インダス・モーターは1月31日、パキスタン中央銀行(SBP)が2022年12月に導入した新たな輸入外為規制(2023年1月4日記事参照)により、自社と部品サプライヤーの原材料・部品輸入が困難となり、必要な部品在庫を確保できないとして、2023年2月1日から14日まで工場を閉鎖するとパキスタン証券取引所に開示した。パックスズキモーターも1月に3週間、同様の理由で四輪工場での生産を止めていた。

パキスタン自動車工業会〔PAMA、サキーブ・H・シラジ会長(アトラスホンダCEO)〕は2月2日、パキスタン自動車部品工業会(PAAPAM)と連名でジャミール・アハメッドSBP総裁に書簡を送り、輸入規制の是正措置が取られなければ、大量失業、政府歳入減、自動車工場閉鎖、投資流出につながるだろうと訴えた(「ドーン」紙2月3日)。

一方、通関ができずに港で滞留するコンテナ約8,000本の輸入貨物も大きな問題となっている。サイエド・ファイサル・サブズワリ海事相は1月23日、滞留するコンテナについて、デマレージとディテンション料の支払いを免除(waive)すると発表した(「ビジネス・レコーダー」紙1月24日)。しかし、その後正式な通知は出されていない。ジェトロが2月3日に海事省に確認したところ、「まだ検討中」との回答だった。

SBPは1月23日、こうした問題を受け、輸入者が支払いを180日以上先延ばしできる場合、あるいは輸入者が決済資金を海外から調達できる場合には、早期に手続きを行い、輸入通関のために船積み書類を輸入者に渡すよう外為認定銀行を指導するサーキュラーPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発出した。この措置の対象となるのは、1月23日時点ですでにパキスタンに到着済みか、1月18日あるいはそれ以前に発送された貨物で、3月31日まで有効となる。

これに対し、日系企業からは、通貨ルピーが急落する中、決済を180日以上延ばすことは金利負担の関係もあり、関係会社間でも難しいとの声が出ている。パキスタンの日系を含む企業は1月以降、ほぼ信用状を開設できておらず、特定品目以外は輸入ができないという事態に陥っている。

なお、SBPの外貨準備高は、サウジアラビアからの協力預金30億ドルを含めて30億8,600万ドル(1月27日)と危機的な水準にまで減少している。

(山口和紀)

(パキスタン)

ビジネス短信 479e582c01c225de