チュニジア、2023年経済再建のカギは政治的安定と民間投資

(チュニジア)

パリ発

2023年02月14日

チュニジアでは、2022年12月17日と2023年1月29日に国民代表議会選挙が行われ、投票率はそれぞれ11.2%、11.4%にとどまった。2021年7月にカイス・サイード大統領が国会を一時停止して、大統領令で立法権を行使する体制に移行し、2022年3月には国民代表議会が解散された(2022年4月7日記事参照)。政治の安定化が課題となっている。

経済面では、マクロ経済状況が一層悪化している。チュニジア国立統計研究所(INS)によると、同国の貿易赤字は252億1,600万チュニジア・ディナール(約1兆590億円、TD、1TD=約42円)で前年比55.6%増、インフレ率は2022年末時点で10.1%となった。中央銀行は、インフレ率が2023年は11%まで上昇すると予想している。さらに、取引信用保険大手のコファスは、2022年の同国の対外債務はGDP比で88.8%になると推測する。経済再建には、現在交渉中のIMFからの約19億ドルの新規融資計画(2022年10月26日記事参照)の実現が必須で、そのためにも政治的安定と対外的信用の回復が課題となる。

この経済状況にもかかわらず、チュ二ジア外国投資促進庁(FIPA)の発表によると、2022年の対チュ二ジア外国直接投資(FDI)額は前年比20%増の22億1,430万TDとなった。内訳は、製造業が58.7%、サービス業が18.7%、エネルギーが22.2%、農業が0.4%で、製造業は前年比36.5%増を記録した。2023年はグリーンやイノベーション分野への民間投資に期待がかかる。

グリーン分野では、政府は2022年12月採択の「2023-2025開発計画」でグリーン経済と気候変動対策に67億TDを割り当てた。また「2023年財政法」では、電気自動車(EV)充電機器の関税を10%に、付加価値税を7%に減税すると発表した。こうした中、トタルエナジーズ(フランス)は同部門への積極的な進出の意向を表明した。既に進出している自動車部品製造のレオニ(ドイツ)は、ステランティス傘下オペルのEV車用ワイヤーハーネスをチュニジアで製造している。生産性の高い労働力と競争力のある賃金水準は、チュニジア製造業の利点で、今後も同分野で新たな投資が期待される。

イノベーション分野への投資にも注目が集まる。人工知能(AI)を活用した意思決定システムを開発するチュニジア発のインスタディープ(InstaDeep)は、2022年初めに1億ドルの資金調達に成功した。2023年1月9日には、新型コロナワクチンをファイザーと開発したバイオテクノロジー企業ビオンテック(ドイツ)がAIスタートアップでは世界最高額となる6億8,000万ドルで同社を買収した。ビオンテックは創薬と次世代免疫療法、ワクチンの開発でAI活用を目指す。世界レベルの有望なスタートアップの出現が引き続き注目される。

(渡辺智子)

(チュニジア)

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