地場航空会社が廃業を発表、現政権下では2件目

(メキシコ、米国、キューバ)

メキシコ発

2023年02月24日

メキシコ地場航空会社のアエロマールが2月15日、廃業を発表した。メキシコ国内21カ所のほか、メキシコと米国やキューバとをつなぐフライトを提供してきた35年間の歴史に幕を閉じる。数年前から抱えてきた財務上の問題に加えて、新型コロナ禍で経営的に大きな打撃を受け、長期的な視点での経営継続が難しいという判断に至った。

同発表の中で、この度の廃業に伴って職を失う約700人の従業員には、一部を除いて給与の支払いを済ませているとし、すでに同社で航空券を購入済みの乗客に対しては、今後代替フライトの手配や情報提供を進めていくことも明らかになった(同社ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

航空業界の専門家によれば、同社は4年ほど前から財務状況の悪化を表明していたという。廃業に追い込まれた責任は、同社の株主だけでなく、運営面や財務面の監督義務を果たしてこなかったメキシコ航空規制当局(AFAC)をはじめとする連邦政府側に帰すべきとの考えもある(「レフォルマ」紙2月17日)。また、新型コロナ感染拡大の影響で経営難に陥った航空会社に対し、米国、欧州、日本などでは政府によるさまざまな救済措置が導入されたが、メキシコではこの種の支援は皆無だった。

メキシコの航空業界における廃業は1995年から2015年にかけて20件と立て続けに起きており、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)政権下において今回のアエロマールの廃業は2020年に廃業したインタージェットに続き2件目となった。

米国航空安全性評価は「カテゴリー2」維持、国内ではカボタージュを認める動きも

米国連邦航空局(FAA)によるメキシコの航空安全性評価は2021年5月に最上位の「カテゴリー1」から「カテゴリー2」に引き下げられたままで、このままではメキシコの航空会社は米国との間で新たな航路の設定や増便が認められない(2023年1月24日記事参照)。

また、外国の航空会社にメキシコ国内の2地点間の旅客と貨物の輸送(カボタージュ)を認める内容の民間航空法と空港法の改正案が2022年12月に国会に提出されたほか、2023年2月にはメキシコ市国際空港での貨物専用便の発着を禁じる政令も発令されており(2023年2月6日記事参照)、メキシコの航空業界にとって厳しい事業環境が続いている。

(渡邊千尋)

(メキシコ、米国、キューバ)

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