米USTR、カナダの乳製品関税割り当てに対して2回目のUSMCA提訴

(米国、カナダ)

ニューヨーク発

2023年02月01日

米国通商代表部(USTR)は1月31日、乳製品輸入に関するカナダの関税割当制度(TRQ)の運用が協定違反として、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づき、紛争解決パネル設置を要請したと公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同紛争でのパネル設置は2回目となる。

米国はかねて、カナダによるTRQの運用が協定で認められた米国乳製品業者によるカナダ市場へのアクセスを不当に阻害しているとして問題視してきた。1回目のパネル裁定は米国の主張を認める結果となり、カナダ政府は2022年5月に裁定を反映した運用方針を発表したが、米国は問題が解決されていないとして再び協議を申し入れていた(2022年12月21日記事参照)。協定では、紛争当事国間の協議で解決できない場合、裁判所に相当するパネルの設置を要請できる。米国はカナダと協議による問題解決ができなかったとして、この度2回目のパネル設置に踏み切った。

キャサリン・タイUSTR代表は「今回のパネル設置を通じて、われわれは利用可能な手段を使って、米国の労働者、農家、加工業者、輸出業者がUSMCAの恩恵を完全に享受できるよう協定を執行していく」との声明を出している。トム・ビルサック農務長官も、カナダは重要な貿易相手国としつつ、「カナダはUSMCAで義務付けられた、米国の乳製品生産者と輸出業者によるカナダ市場への公正なアクセスを阻害し続けている」と懸念を表明している。

米国産業界からは、全米牛乳生産者連盟(NMPF)と米国酪農輸出協会(USDEC)がUSTRを評価する共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出しているほか、国際乳製品協会(IDFA)もUSTRの判断を支持する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。USTRは今回の件以外にも、メキシコのエネルギー政策が協定違反として、カナダと共同で2022年7月からメキシコ政府と協議を進めているほか(2022年12月23日記事参照)、労働問題に特化した紛争解決メカニズムを多用してメキシコ内の自動車工場での労働権侵害の疑いを追及するなど(2023年1月31日記事参照)、USMCAの紛争解決制度を積極的に活用している。

(磯部真一)

(米国、カナダ)

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