米USTR、カナダの乳製品関税割り当て問題で3回目の協議申し入れ、USMCA活用

(米国、カナダ)

ニューヨーク発

2022年12月21日

米国通商代表部(USTR)は12月20日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づき、カナダに対し乳製品の関税割当制度(TRQ)の運用に関する紛争解決のための協議を申し入れた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。USTRがUSMCAを活用してカナダの同問題を取り上げるのは3回目となる。

TRQは、輸入国政府が特定の輸入品目について、一定量の輸入まで低税率の関税を認め、それを超える輸入については高い関税率を課すことを可能にする制度で、WTOで認められている。USMCAはカナダに対して14種類の乳製品(注)にTRQを維持することを認めている。米国はカナダのTRQ運用に関して、低税率での輸入枠の大部分を、米乳製品業者と競合するカナダの乳製品加工業者のために確保していることがUSMCA違反になると以前から主張していた。USTRの1回目の協議申し入れについては、協議では解決できずに紛争解決パネルの設置に至った。パネルは2022年1月、米国の主張を認める裁定を出し、カナダ政府は同年5月に裁定を反映して運用方針を発表していた(2022年5月18日記事参照)。しかし、USTRはその直後に、カナダの方針が引き続きUSMCA違反だとして2回目の協議を申し入れた(2022年5月26日記事参照)。今回の協議申し入れは、実質的に2回目の申し入れ内容を拡大するかたちとなっている。USTRによると、カナダはTRQ枠の分配を決定するに当たって、申請者の業種ごとに異なる市場シェアの算定方法を採用しており、そのために輸入者がTRQ枠を最大限に活用できていないという。USTRの協議申し入れ文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、具体的には加工業者、販売業者、さらなる加工業者ごとに算定方式が異なっており、結果的に米国の乳製品業者と競合する加工業者を利する内容になっているとしている。

USTRのキャサリン・タイ代表は「カナダは自らの義務を履行するどころか、米国の労働者や農業者、生産者、輸出者が協定で当初約束されていた市場アクセスを否定する、USMCAと不整合な新たな乳製品政策の導入に固執している」と強く批判する声明を出した。USTRは協議で解決できない場合、再び紛争解決パネルの設置を要請し得るとしている。全米牛乳生産者連盟(NMPF)は米国酪農輸出協会(USDEC)と共同で、USTRの新たな協議申し入れの動きを評価する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。

(注)牛乳、クリーム、脱脂粉乳、バターおよびクリームパウダー、産業用チーズ、全種類のチーズ、粉乳、加糖練乳、ヨーグルトおよびバターミルク、粉状バターミルク、乳清、生乳成分で構成される製品、アイスクリームおよびアイスクリームミックス、その他乳製品。

(磯部真一)

(米国、カナダ)

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