欧州自動車工業会、次期排ガス規制案「Euro7」への政策提言書を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年02月20日

欧州自動車工業会(ACEA)は2月16日、欧州委員会が2022年11月に発表した次期排ガス規制案「Euro7(ユーロ7)」(2022年11月11日記事参照)に関し、「乗用車・小型商用車(バン)についての政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」と「大型車についての政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ACEAは双方の文書で、現行規則に適合する車両への買い替えや電動車の販売台数増加によって、道路輸送部門の窒素酸化物(NOx)の排出量は2035年までに2020年比で80%削減可能で、Euro7においてNOxなど大気汚染物質の排出量を仮にゼロにすると規定した場合でも、2035年までの排出削減量に劇的な変化をもたらさないとの独自調査結果を示し、Euro7導入の効果に疑問符を付けた。現行規則が適用開始以降、複数回にわたって改正されたことに苦言を呈し、EUとしてゼロエミッション車への移行に力を入れる中、内燃機関搭載車の改良を迫る排ガス規制の強化は、自動車業界の脱炭素化に向けた投資を減速させるものだと批判した。

ACEAは適用開始年について、乗用車は関連法令の内容を定めてから少なくとも3年のリードタイムを設けた後、大型車は例えば2月14日に提案した二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案(2023年2月16日記事参照)とも整合させて2030年とするなど、それぞれ2025年、2027年としている欧州委案を見直すことを求めた。

また、ACEAがほかに強い危惧を示したのは、コスト負担の増加だ。例えば、新規制案では、廃車になるまで常に排出量を監視できるシステムを車両に搭載することを求めているが、ACEAは新たなセンサーの開発が必要となり、そのコストは「未知数」だと反発した。特に、乗用車・バンについては、EUは2035年以降、内燃機関車搭載車の生産を実質禁止するとしている(2022年10月31日記事参照)ことから、仮にEuro7の適用開始後、規制改正が行われ、車載システムの改良が求められることは受け入れられないと述べた。

Euro7からブレーキやタイヤの摩耗による粉じんに伴う汚染物質の排出を規制対象に加えることにも言及。ブレーキ関連では、乗用車・バン、大型車それぞれに適した検査方法を確立することがまず求められると指摘し、バンについては乗用車と異なる基準を設けることが適切で、同時に適用開始とするべきではないとした。タイヤについてはタイヤ業界に対応を求めるべきだと主張した。

このほか、乗用車・バンについての提言書では、バンの中でも特にクラス3の車両(車両重量1.76トン超3.5トン未満)について、重量やタイヤの転がり抵抗の違いを考慮し、より軽量な車両とは異なった基準を引き続き設けることや、製品サイクルが乗用車より長いことから、型式認証の有効期間を長く設定することも求めた。

大型車に関する提言書では、新規制案では大型車についても路上走行試験(RDE)を課すとするなど、検査方法を変更しようとしていることに反発。提案された条件を考慮すると、現時点では新たな排出規制値を順守しているかを技術的に測定することは不可能だとして、検査方法は現状のままとすることを求めた。

(滝澤祥子)

(EU)

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