レモンド米商務長官、CHIPSプラス法による半導体産業再興のビジョンについて講演

(米国)

ニューヨーク発

2023年02月24日

米国のジーナ・レモンド商務長官は2月23日、「CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)」により国内の半導体産業を再興させるビジョンについて講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。

CHIPSプラス法は2022年8月に成立した法律で、半導体の製造能力増強に関する米国内への民間投資に対して、今後5年間で390億ドルの資金援助を行う予算を含んでいる。また、同期間中に110億ドルを半導体関連の研究開発プログラムに投じることになっている(2022年9月8日記事参照)。レモンド長官は、半導体は全ての先端技術の基盤であり、国家安全保障に直結するものと定義した。その上で、米国が世界に占める半導体の製造能力が1990年(37%)から現在(12%)にかけて大きく落ち込んでいることや、世界の先端半導体製造の92%を台湾が担っていることなどを挙げて、こうした状況は国家安全保障上の危機と警鐘を鳴らした。そこで、バイデン政権はCHIPSプラス法を活用して、2030年までに次の事項を達成すると述べた。

  • 先端ロジック半導体の工場を中心とした新たな大規模クラスターを少なくとも2つ形成する。
  • 複数の先端パッケージング施設を開設し、同技術の世界のリーダーとなる。
  • 経済的に競争力あるかたちで、先端のメモリー半導体を製造する。
  • 自動車や医療機器、防衛装備品に搭載されるレガシー半導体の製造能力を増強する。

レモンド長官は実現に向けて、民間投資への390億ドルの資金援助のみならず、110億ドルの研究開発予算を使って「国家半導体技術センター(NSTC)」を創設することを強調した。NSTCは政府や産業界、消費者、サプライヤー、教育機関、起業家、投資家が交流し、イノベーション、連携、問題解決に取り組む意欲的な官民パートナーシップとなる予定。全米で複数の施設が設置される見通しだが、ニューヨーク州オールバニーにあるIBMの施設がNSTCの基盤になるとみられる(2022年10月11日記事参照)。レモンド長官は今後の最大の課題として、半導体製造に関わる労働力の開発を挙げた。この課題に有効に対処できない場合、米国では2030年までに同分野で熟練技術者が9万人不足する可能性があると述べ、産学に対して投資を呼びかけた。

CHIPSプラス法の今後の運用予定については、まず2月27日の週に、商業用半導体の製造施設に対する投資への資金援助の申請受け付けを開始し、数カ月以内にサプライヤーや研究開発関連の投資についても開始するとした。

(磯部真一)

(米国)

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